生きていくことをトータルで考える
ずいぶん以前から録りためていたNHKBSプレミアムの連続ドラマ「ライオンのおやつ」を見始めた。まだ若いヒロインがとても美しい田舎町にあるホスピス「ライオンの家」に移住するところから物語が始まる。まだ第一話しか見ていない。でも、その中でヒロインが言う「ずっと無理して生きてきた」という言葉が胸に響いた。
もちろん、無理して生きていない人間なんていない。だけど、命が有限だと悟った時、“もう少し違う生き方はできなかったんだろうか”と考え込んでしまうものだろう。
昨日、ハルナは午後から夜にかけてずっと、退職後の新事業のプロットを作っていた。出ていくお金と入ってくるお金。出ていくお金は明らかだけれど、入ってくるお金は算段でしかない。どれくらい需要があるか分からない。「こんなんじゃ赤字確定だ…」とハルナは落ち込んでいた。久しぶりに寝つきが悪かったくらいに。「この先、ちゃんと生活していけるのかな」とか「いま以上に働かないといけないなら、働き方改革とか言ってる場合じゃない」とか不安になってきた。
そして、今朝、そのドラマ「ライオンのおやつ」を観て、あらためて思い出した。「いくら儲かるとかじゃなかったよね」って。ハルナが管理職を降りて、今の組織を退職しようと決めたのは「こんなに無理をして、自分に嘘をついて生きてくのは嫌だ」と思ったからだ。
定年退職まであと10年、無理をして笑顔を作って、我慢して、退職金を満額受け取る。それができると思っているのはあくまでも幻想だ。ひとはいま持っているものをいつ失うか分からない。病気になるかもしれないし、ケガで身体が不自由になるかもしれない。組織が倒産するってこともあるかもしれない。家族に介護が必要になるかもしれない。先のことなんて誰にも分からない。現にハルナの父は定年退職を迎える年に脳梗塞を起こして、重い障害が残って、退職後に夢見ていたことをいくつもあきらめないといけなくなった。
いまハルナがやりたいと思っていることを始めること。
それがたとえすぐに儲けにつながらなかったとしても、今よりもハルナのこころが自由になるのであれば…当初はそう思って考え始めた新事業のはずだった。
昨日、久しぶりに友だちから連絡が来た。「初期段階のがんが見つかって、いま治療中です」と書かれていた。そういう年齢に来ているのだ、とあらためてハルナは思った。がんの原因はまだ明らかでない部分も多いけれど、ストレスと深い関連のあるがんもある。長い間、ストレスにさらされるのは、どう考えても健康に良くない。それにがんに限らず何かの治療を始めることになれば、個人事業のほうが治療と仕事を並行しやすい。これからはもっとトータルに考えないといけないな。儲かるかどうかだけではなく、生きやすさを考えてもう一度、プランを練り直そう、ハルナはそう思いなおした。
(つづく)
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