旬杯リレー小説【承】〜夏の記憶〜
※このストーリーは、↓の起ストーリー【B】の続きになります。
↓ ここより承ストーリー ↓
「あっちいなー」
「あついねー」
「プールいく?」
「さすがに飽きたべ」
「やっぱ夏は海っしょ」
「うみ!」
「受験、やばくない?」
「平気だって、明日からで」
「いこうぜ、海!」
「いくいくー!」
ぼくらの町から歩いて数分のところに海がある。結局なんだかんだいっていつも海なのだ。海に着くと、潮風に誘われるように次々飛び込んだ。地元の人間しかいない小さな砂浜は、ぼくらの秘密基地のようにひっそりとしていてとても居心地が良い。
受験を控えた中3の夏休み。気の置けない仲間たちと集まって過ごす時間は、なんて無駄で、なんて有意義なひとときだったのだろう。一人で家にいると、ろくでもないことばかり考えてしまうから。
彼らとどうでもいい話をして、なんでもない今を共有しているのが最高に楽しくて。過ぎてしまった時間は、振り返ればいつだってキラキラして見えた。
夕方になって海を後にすると、ぼくらは坂道をゆっくりと下っていく。日が傾いていくぶん和らいだ日差し、だけどまだじりじりと地面を焼き付けてじんわり汗が吹き出した。
皆でいつものコンビニに寄り、アイスを買う。君がソーダアイスを手に取ったのを見て、ぼくも同じのを選んだ。恋なんてものをぼくはまだ知らない。だけど、なんとなく君を目に追ってしまうのはなぜだろう。
アイスを食べながら皆の後ろのほうを歩いていると、ふと目の前に巨大な雲があることに気づいた。ソフトクリームのように、美しい曲線を描いた入道雲。ぼくは今年初めて入道雲を見た気がする。それともそれはいつもそこにあったのに、下ばかり見ていて気づかなかったのだろうか。
誰も見てないのを確かめると、ぼくは片目を瞑りアイスを持っていないほうの手を雲に伸ばす。その巨大なソフトクリームをぎゅっとつかむように。
もちろん、その手は何もつかめずに空を切る。ただ手を伸ばしただけで欲しいものがつかめるなんて、そんな上手い話はないよなぁ。
ふと横を見ると、君と目が合ってぼくはドキッとした。さっきまで皆と前を歩いていたはずなのに、いつのまに隣にきてたんだろう。
まさか、今の全部見られていたのだろうか。
ほんのり頬が赤くなるのが自分でもわかる。
彼女はふふっと笑った。
「何してたの?」
「いや、べつに..」
「あの雲、ソフトクリームみたい。なんだかつかみたくなっちゃうよね」
「うん、そうだね」
彼女もぼくと同じように手を伸ばして、雲をつかもうとした。少し焼けた横顔、夏の太陽を吸いこんだかのようにくりっとしたその目に映るぼくは、今どんな顔をしてるだろうか。
「あー残念!」
彼女はそういうと、前を歩くグループに駆け出していった。
ぼくは何も言わず彼女の背中を目で追う。手に持っていたソーダアイスが溶けだして、ぽたぽたとアスファルトに濃い染みをつけた。
ふと見ると、あの入道雲を飛行機雲がまっすぐ突き抜けている。前を歩く彼女が空を見上げて振り返ると、ぼくに視線を向けてニヤッとした。
夏草の匂いが通り過ぎていく細道。
絶え間なく生を主張し続ける蝉の声。
生い茂った万緑の木々の横をひたすらに歩くぼくらは、いったいどこへ向かっているのだろうか。ぼくは溶け切ったアイスをひとくちで口の中に放り込んだ。
言葉足らずのぼくらの隙間を、夏の色が埋めていく。
空って、こんなにも青かっただろうか?
大人になったら忘れてしまうのかもしれない。だけど、修正できないこの瞬間、記憶の中の君を大事にしたくて。君の左の手首につけていた水色のシュシュを、今も鮮やかに思い出すんだ。
1500字程度
ーー
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