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モンブラン失言【毎週ショートショート】

『師匠!待ってください..


僕はもう足が、足が..!』



師匠は振り向きもしない。

『限界を越えたその先に、進むべき道があるのじゃ。儂が最後に教えられるのは..モンブラン失言に気をつけるんじゃぞ』

師匠が命と引き換えに教えてくれるもの。僕はそんなのいらないって突っぱねた。モンブラン失言?そんなものより、僕はずっと師匠の側にいたかった。


ぬかるみに足を取られても、ひたすら前へ進んでいく。どれくらい経っただろう。頂上に辿り着き振り向くと、下の方で師匠がぬかるみに顔を埋めて倒れていた。

『師匠っ…!!』

『いいんだ、それより早く、そのマロンを…!』


僕は、頂に聳える大きなマロンを一口齧った。芳醇な甘さと食感に思わず貪る。足元のマロンクリームも同時に頂いた。


『モンブランとやらも大したことないですね』 


といったその瞬間、僕は何者かに引っ張られ大きく空を飛んだ。


※   ※   ※



「何か話し声が聴こえたけど…もうっ、また私のモンブラン、蟻に食べられてる!」

摘まれた蟻は抵抗も虚しく、窓の外の地面に叩きつけられた。

「やだ、もう一匹死んでるわ」

彼女はモンブランをゴミ箱に投げ捨てた。




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