シロクマ文芸部✖️作詞タイム『冬の色』
冬の色は、白群色。
一面の雪って、純白じゃないんだよ。
知ってた?
雪まつりでろうそくを灯すと、ほのかな紫と橙色。雪原の影はほんのり紫色で、それとはまた違う。
薄曇りの日には、雪が陰を帯び微かな水色と緑色と灰色が混ざる。それが、白群色。
どれだけ白く染めても、
真っ白にならないって不思議だね。
まるで私みたい。
真っ白な世界の中で
どれだけ必死に綺麗な白で着飾ろうとしても
真っ白になんかなれない。
拭いても拭いてもぬぐえない汚れは
どうしたら綺麗になるのかな。
真っ白なコートに、ふわふわの白いムートンブーツ、白のワンピース。まるで儀式のように白を身に纏った私は、わざわざ北海道の雪原までやってきて雪の中に身を沈めた。
一面の空は、白群色。
どれだけ白が群れたって真っ白になんかなれやしない。どれだけ白を着ても、白になんかなれないんだ。このまま空に呑み込まれて、ひとつになれたらいいのに。そうしたら私はようやく憧れの『白』になれるだろうか。
「おーい、おーい」
見覚えのある声が沈黙を破った。
声の主は、ズボッ、ズボッと不器用な足音を立てながら近づいてきて私の顔を覗き込む。
「あっ、生きてる」
私が目線を合わせると、彼はホッとしたように笑った。
「もう、どこ行っちゃったかと思ったらこんなとこにいるんだもん。探しちゃったよ」
少しおどけたように話すのは彼の気遣いだろう。彼は身動きしない私の隣に腰を下ろすと、同じように大の字になった。
「あっ!すごい!ほんとに一面真っ白だよ。綺麗だなぁ。僕、この色好き」
彼は何も聞かない。お腹の中のあの子は決して帰ってこない。私は汚れている。何も聞かずに同じ目線でそばにいてくれるこの心地良さこそ、憧れの『白』なのだろう。私は、口を開くと涙腺が緩んで止まらなくなりそうで、キュッと口を結んでいた。
ほんの少し空が鈍色で覆われ始めると、彼はむくっと起き上がり私の手を引っ張って立たせてくれた。
「やっぱり、立ち上がれなくなってたんでしょ。町に戻って何かあったかいの食べよう。お腹すいた」
二人ともすっかり冷え切って、手が驚く程冷たい。
「うん、せっかく北海道に来たのに、私なにも食べてない。石狩鍋もいいし、ラーメンも食べたい。ジンギスカンもいいな」
「おっ、食欲でてきたじゃん。いいよ、全部食べよ」
ゆっくりと進んでいく二人の足跡が、白群色の雪原から遠ざかっていく。私たちは冷たい冷たいと言いながら手を繋いでいた。
「見つけた時、死んでるのかと思った。真っ白い雪の中で白い君が、白だけど雪とは違う白で。だから見つけられた」
生きていればいろんな色になる。たとえそれが望んだ色じゃなくても、となりに一緒に歩いてくれる人がいてくれたら、いつか私も私の色を好きになれるだろうか。
灯りを帯び始めた街並みが夜の中で煌めきだしている。私たちはその灯りを目指して、ゆっくりと確実に歩いていた。
いつもありがとうございます🐻❄️❣️
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1.「Red thread of fate(運命の赤い糸)」PJさん
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