【旬杯ストーリー・結】夏の記憶
⭐️承
⭐️転
⭐️結
気づけばあれから10年も経っていた。
私は同窓会の葉書を机の見えるところに飾った。
彼にばったり会えるかもしれない、と吉田の居酒屋に何度か友達と通っていたが、彼はデザインの仕事がやりたいからと東京に行ってしまったという。
何も言ってくれなかったことに少し、いやだいぶ失望して、居酒屋で愚痴りまくったりもした。私は私なりに地元で何人かとつきあったりもした。だけど、あの時心がパズルのピースのようにピタッとハマった、あんな瞬間は誰とも共有できなかった。
同窓会には彼も来るだろうか..
同窓会当日、吉田と談笑している細身の男性が彼だとすぐわかった。やっぱり、カッコよくなっちゃったなぁ..。
うまく近くにいけずにいると、皆でタイムカプセルを掘りにいく話になった。先生の許可はすでにもらっていて、学校の校庭にぞろぞろと入っていく。久しぶりの学校にきょろきょろしていると、後ろから肩を叩かれた。
「よう、久しぶり」
彼だった。
「あ、来てたんだね、めっちゃ久しぶりじゃん!元気だった?」
気づいてなかった振りを装いながら、冷静に話そうとしても声がうわずってしまう。低い大人の声、私よりずっと高くなってしまった背、どことなく上品でオシャレなシャツがこの10年を物語る。
「おーい、開けるぞー!」
クラス会長だった三田が皆を集めた。
私も自分のものを探したが、なかなか見つからない。
「あ、これじゃない?」
と彼が見つけたのは、私の名前の入った青い封筒だった。
「あ、あった!ありがとう」
彼がそれを差し出してくる。
「あ、あのね。それ、開けてみて」
「え?でも..」
「うん、だってそれ、キミ宛だから」
彼は一瞬戸惑い、私と封筒を交互に見てから、おもむろに封筒を開ける。
彼は、手紙を読むと私をじっと見つめた。
「ほんとう?」
「ほ、本当よ」
私はそう言って顔をそむけた。この歳になって面と向かって「好き」っていうことがこんなに恥ずかしいなんて。10年前の私のバカ。
でも、どこかホッとしている。
あの時の私を今やっと解き放ってあげたのだ。
もう、返事なんてどちらでもいい。
これでやっと前に進めるのだから。
「まいったなー」
彼は照れたように頭をガシガシとかいた。
「ぼくが言おうと思ってたのに」
といってニヤリと笑うと、私を木の陰に引っ張った。顔が近い。皆はタイムカプセルの中身を見せ合って騒いでおり、誰もこちらには気づいていないようだ。
「10年越しかぁ」
「えっ、そうなの?」
「そうなの」
私たちは顔を見合わせて笑った。
10年もの間、ずいぶん遠回りをしたものだ。
やっぱりこのカチッとハマった感じがとても居心地が良い。とても10年ぶりとは思えないほどだ。
「今度一緒に、アイスクリーム食べにいきましょ」
「あの入道雲のような?」
私は彼にニヤリと笑って、皆の輪に戻った。
こうして来年も、再来年も、ずっとそばにいれたらいい。1人ではつかめなかったもの、二人ならきっと手にすることができるよね。
《終》
恋愛のハッピーエンド、
あまり書いたことがないかもしれない(*ノωノ)ハズイ
🎆最終締切は7月21日です🎆
【承、転、結】
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