ボンゾーの秘密|掌編小説
僕の名前は、凡造。
ボンゾー、って読む。
めずらしい名前でしょ?
実は僕は忍者の末裔で、
本当の苗字は服部っていうんだ。
今の時代、忍者は存在しないことになってる。
本当の名前は、服部半蔵の名を受け継いで「半蔵」っていうんだけど、普段は「凡造」を名乗るようにしている。これは、幼馴染みの沙綾も知らないことだ。
沙綾の家は、昔でいえば華族のお姫様。
今はそんな身分もうないってことになってるけど、そんなの実際になくなるわけないじゃん?あの子は僕の守るべきお姫様なんだ。
僕はあえて存在を薄くするために、身なりに気を使わない風なボサボサの髪と、ダサい服を通している。抜群に人目を引くほどに美しい彼女に近寄る奴は、すべて排除してきた。
だから同じ大学にも入ったし、同じバンドにも入れるようにこっそりキーボードやベースの練習もしてた。気の乗らないフリしてるけど、美桜、友也、バンドのメンバーはすべて僕が手回しをして、沙綾にふさわしいメンツを選んでいる。本人たちはもちろん何も知らない。
「ちょっと、ボンゾー!あんただって、眼鏡をはずして、前髪をあげたら、ちょっとはカッコよく…!」
うっかり油断をしてる隙に、彼女の指が僕の前髪を持ち上げる。ハッとした彼女と目が合うと、僕はあわてて髪で元のように目を隠した。
口ごもってしまうほど、僕ってヤバい顔してるんだろうか..
ほんのり赤く染まる耳を沙綾に見せないよう、視線をそらす。主従関係の僕らに恋愛は御法度だ。相手はお姫様だぞ、僕のような一忍者が手を出せるわけが..
「あっ!美桜〜!友也〜!こっちこっち〜!」
その時ようやく大学のカフェテラスに他のメンバーがやってきて、僕は話が逸れることにホッとする。
その瞬間、何かが沙綾の後ろで動いた。
僕は瞬時にその対象物を掴み、脱兎の如く駆け出した。よく見るとそれは、銀杏の葉。に、見せかけた盗聴器だった。僕はそれを握り潰すとゴミ箱に捨てた。
「えっ?えっ!?なに、今の?ボンゾーくん、はやっ!忍者みたいだったよ!」
と目を見開く美桜に、
「そうなの、ボンゾーってボーッとしてるのに、時々ものすごく素早いの!ホントは忍者だったりしてね?」
といたずらっぽく笑う沙綾に、凡造はそしらぬフリで席に戻る。
「で、なんの曲やるんだ?」
「ボンゾー、キーボードやってくれるの⁉︎ありがとう!ふふ、それをこれから考えるところなのよ」
忍者のことなどすっかり忘れて話の弾んでいる3人。道沿いの銀杏は鮮やかな黄色に染まり、カサカサと鳴る落ち葉が季節の変わり目を知らせている。この安寧な休息が永遠に続けばいいと、僕は切に願った。
こちらはくえすさんの音楽プロジェクト「イメージ」の二次創作です。ぼんぞーのパラレルワールド的にお読みください✨
ソラノイロさんのストーリーのB面として、ぼんぞーの心のうちを書いてみました。沙綾ちゃんの台詞を2箇所引用させて頂きました(。-人-。)
朝になったらちよさんバージョンのぼんぞーがいた!
こっちのぼんぞーのほうが好み(*ノωノ)キャッ