サンタなんていないよ。
今年のイブは、付き合って1年になる彼と二人で過ごす予定だった。イルミネーションを一緒に見て、オシャレなレストランでディナーを食べて。ベタなクリスマスを一度でいいからしてみたい、ずっとそう夢に見ていた。
なのに。
《ごめん、今日急に残業になっちゃって…この埋め合わせはきっとするから》
イヴの夜、スマホのライトが光っている。
私は彼のLINEを既読スルーした。
これまでも何度かこういうことがあった。
それでも、今日は絶対大丈夫だっていってたのに。嘘つき。
街のイルミネーションやクリスマスソングが虚しく響く。看板を持ったサンタクロースの赤い服が目の端に映らないよう、早足で家に向かう。みんななんだか楽しそう。なのに私だけ、バカみたい。クリスマスなんて。サンタなんているわけないじゃない。
アパートの部屋は、まるでクリスマスなんて知らないかのようにしんと冷え切っている。毎年家族で当たり前のように過ごしていたクリスマス、あんなにうっとうしかったのに、今ではこんなに恋しい。一人暮らしなんかするんじゃなかったな…
ーコン、コン。
窓を叩く音がして、そっとカーテンを開けるとそこに誰かがいた。白い髭、赤い帽子、赤い服。サンタクロース?まさか。
「約束のものを、持ってきたよ」
サンタは窓から大きなプレゼントの袋を私に放り投げると、さっと突風が吹いて目を瞑った瞬間消え去っていた。
ー約束のもの?
その袋を急いで開けると..
…
目を開けて、時計を23時を過ぎていた。
どうやら眠ってしまったようだ。
さっきのサンタは、きっと夢なのだろう。
と分かってても、ついプレゼントの袋を探してしまう。当然ながらどこにも見当たらない。
ピンポーン。
チャイムが鳴って、玄関をのぞくと彼が立っていた。
「遅くなってごめん!」
彼の手にはコンビニのケーキが乗っている。もう片方にはおでんの袋を下げていた。走ってきたのか頬は赤く染まって、髪には雪がついている。
「なんだか、ちぐはぐね」
私はふふっと笑ってドアを開け、彼を招き入れる。
別にセオリー通りじゃなくたっていいじゃない。ここに私のことを考えてくれる人がいる。それだけで、きゅっと胸が温かくなった。
サンタはいないけど、どうやら素敵なプレゼントをもらったみたい。私は傾いて形のくずれたショートケーキを箱から出してそっとお皿に乗せ、汁のこぼれたおでんを入れ替えて温めると、彼の前に置いた。
窓の外を見るといつのまにか雪が降っていて、暗い部屋に街灯の灯りが溢れて滲んでいる。ふと見上げると、星のような光がひとつ、北の空に瞬いたような気がした。
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