君のいた季節【ショートショート】#創作タイム
PJさんの【作詞タイム】に寄せられた歌詞から、いろいろな創作を楽しむ企画【創作タイム】。
ここから2つ歌詞を選んで、ぽんのように繋げてストーリーにしてみることにしました。
ではいってみよー( `・∀・´)ノ
Side A
走れ、走れ。
きっと間に合う。
いや、間に合わせてみせる。
白い息が後から付いてくる。風が髪の寝癖を立たせていく。そんなの構わない。何度となく見る時計は、6時50分を差していた。
駅の階段を駆け登り、改札を一瞬で駆け抜けた。ホームへの階段を駆け降り、息を整えながら髪を撫で付けて整える。
そして、
君がいた。
3両目の前の、いつものドアのところ。
僕は同じ車両の後ろのドアに並んだ。
ちらっと見えた赤いチェックのマフラーに君の顔が半分埋まってる。少し俯いた頬がほんのり赤くなっていた。
こっち、見ないかな…
見るわけ、ないか。
目線を戻すまもなく電車がやってきたので乗り込み、反対側のドア付近に立つ。前のドアに映る君の顔をちらっと盗み見しつつ、スマホを見るふりをした。
一瞬ちらっと見ただけなのに。
こんなにたくさんの人がいるのに。
君しか見えないなんて、この気持ちに恋以外の呼び名があるだろうか。
距離は縮まらないまま、電車は僕らを乗せて滑るように朝の空気を駆け抜けていく。
あ、雪。
窓の外に白いものがチラついている。
どおりでやたら寒いわけだ。
ふっと君の方を見たら、君もこっちを見た。
だけどその瞬間、君に心の中を見透かされそうで、僕は思わず目を逸らした。
❄️ ❄️ ❄️
Side B
いつもの電車、いつもの車両。
きみと初めて言葉を交わしたのは高校3年の春だった。気になっていたきみが同じクラスで、席が前と後ろになるなんて。その奇跡に私はすっかり舞い上がった。
いつも同じ電車だね、って笑ったその顔と。窓の外に散るピンクの花びらがまるで私たちを祝福してくれてるかのようで。このまま時が止まればいいとそっと願った。
永遠を願うのは、怖かったから。
こんなにそばにいたいと思っていたのに、きっと叶わないことをどこかで知っていた。
「ねぇ」って振り向くときのその横顔も、声も、後ろにプリントを回すその仕草も、居眠りしてる後ろ姿も、ずっとずっと記憶の中に残ってる。
二人で遊んだ海辺には、真っ赤な夕陽が沈んでいく。もうここには来ない、って誓ったから、今日で最後にするね。もしかしたら会えるかなって思ったけど、やっぱりきみはいなかった。
何がすれ違ってしまったのか、うまく言葉にはできないけど、もう同じ道は歩けないんだってことはちゃんとわかってる。だから私は私の道をいく。きみがいたからここまで来れたこと、忘れないでおくよ。
空には一番星が光り出している。
私はその瞬きを見失わないように上を向いたまま、砂浜に足跡をつけながら、2人で聴いたあの歌を日が暮れるまで口ずさんでいた。
年末年始、『創作タイム』でいろいろ遊んでみましょ〜( ´꒳`*)人(*´꒳` )✨
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