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【日本酒学】第1回 日本酒概論
今回から「日本酒学」と題して日本酒の造り方や歴史,関連する文化などについてまとめていきたいと思います.
順序立てて整理するための軸として日本酒検定を題材とし,過去問も交えながら紹介していきます.
日本酒検定って何??と思った方は是非こちらもお読みください.
日本酒検定2級以上は同じテキスト(「新訂 日本酒の基」)から出題されますが,上級ほど「こんなところからも出るの?」という非常に細かい内容が出題されることがあり,300ページ弱のテキストに書かれている全ての情報を頭に入れて試験に臨むのは難しいと思います.
そこで,基本的には記事を読むだけで日本酒検定1級合格に必要な知識を得ることができるようにまとめていきます.
さらに私自身の学び直しも兼ねて,単純な知識だけではないWhy・Howに関する補足を入れていくことで,日本酒検定に興味がない方にとっても面白い読み物にしていきたいと思っています.
一方で試験対策を目的とされる方に必要な情報と混同しないよう,以下のような構成で書いていきます.
①トピックス ・・・ 日本酒検定に出題される内容を抽出した解説
②演習問題 ・・・ 過去の日本酒検定問題を紹介
③今回のコラム ・・・ (試験とは無関係な)補足や関連情報など
それではやっていきましょう♬
1. トピックス:日本酒概論
初めの章では主に日本酒市場を取り巻く情勢や日本酒自体の概要,セールスプロモーションの必要性などがまとめられています.
その中でも試験に出る項目を紹介します.
(1) 日本酒の輸出金額と輸出量
特に2006年と2017年の対比が出題されやすいです.
輸出金額に関しては2021年に大きく伸びており,今後はこの急増を問われることもありそうです.
※赤や青で色付けしている数字や情報は特に出題頻度の高い内容です.
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(2) 国内の日本酒消費数量
国内の消費量と酒類全体における日本酒の割合が出題されることがあります.特に日本酒の国内消費ピークが昭和48年(1973年)というのは頻出事項です.
![](https://assets.st-note.com/img/1729923213-0TDZpI6fM73q12mtsOHGSQgi.png?width=1200)
上記の通り日本酒の生産量は減少していますが,一方で特定名称酒(いわゆる高級な日本酒,詳細は別途)の構成比は伸びています.ここも押さえておきましょう.
![](https://assets.st-note.com/img/1729923770-9e40nYjzM3Ro7Xmr85ytCp6q.png)
ちなみに日本酒検定における年号は和暦(元号)と西暦のどちらでも出題される可能性があるので,両方覚えるのが難しければ特に明治以降はそれぞれ和暦元年が西暦何年かを覚えておくとよいでしょう.
(3) 日本酒の商品特性とセールスポイント
日本酒検定のテキストはSSIが認定する「唎酒師」のテキストも兼ねているため,日本酒を提供・販売する立場から見たセールスプロモーションに関する内容も多く掲載されています.
日本酒の商品特性の中から試験によく出る項目を抜粋しました.
![](https://assets.st-note.com/img/1729923983-cigWlCkNArIBVKEyZzSeM1Xp.png?width=1200)
特に「(他の酒類と比較して)身体を冷やす効果が低い」のは日本酒に豊富に含まれるアミノ酸の血管拡張作用によって温かい血液が流れやすくなるためと考えられています.
2. 演習問題
それでは,実際に出題された過去問を見てさらに理解を深めましょう.
過去問
問1-1(準1級)
2006年から2017年までの日本酒の輸出金額の伸長を選択肢より一つ選べ.
1:変わらない 2:約2倍 3:約3倍 4:約4倍
問1-2(1級)
2017年時点の日本酒の輸出金額を選択肢より一つ選べ.
1:115億円 2:155億円 3:約185億円 4:約240億円
問1-3(準1級)
国内における日本酒消費数量のピークはいつ頃か.
1:昭和30年頃 2:昭和40年頃 3:昭和50年頃 4:昭和60年頃
問1-4(1級)
日本酒の商品特性として適切なものはどれか.
1:飲用温度帯の幅が比較的狭い
2:他酒類と比較すると身体を冷やす効果が低い
3:原料(品種)の違いが香味に大きな影響を与える
4:アルコール度数が比較的低いものが多い
過去問解答・解説
問1-1 3:約3倍
問1-2 3:約185億円
輸出金額は 2006年 約60億円 ⇒ 2017年 約190億円
問1-3 3:昭和50年頃
日本酒の国内消費量ピークは昭和48年(1973年)
問1-4 2:他酒類と比較すると身体を冷やす効果が低い
・飲用温度帯の幅は広い
⇒冷酒や燗など様々な温度で飲まれていますね.
・原料(品種)の違いが香味に与える影響は小さい
⇒米や水など原料の違いが全く影響しないわけではありませんが,
大きい影響は製法の違いによって現れることが多いです.
・アルコール度数は比較的高い
⇒15~20度と醸造酒(ビールやワインなど)の中では比較的高いです.
3. 今回のコラム
まずは第1回を書いてみたわけですが,いかがでしたでしょうか.
自分から始めた企画にも関わらず,既に息切れしそうです 笑
この密度で最後まで走り切れるかわかりませんが,まずは続けてみようと思います.
さて,今回は日本酒業界の入口を垣間見ましたが,何と言っても印象的なのは日本酒消費量の劇的な低下です.
昭和48年には酒類全体の30%を占めた日本酒の構成比は今や6%未満.
日本酒はアルコール度数が高いので消費数量で単純に比較するのはやや浅薄ですが,とはいえ,日本酒を飲むのは10人に1人以下と言っていい数字です.
これは皆さんの周りが何を飲んでいるかを想像しても,それほど違和感はないのではないでしょうか.
これだけ劇的な離客率はそうそうあるものではなく,日本酒業界はこの状況を踏まえてどう立ち回っていくかが重要なのだと考えます.
もう一点,特定名称酒の割合が増えているということでしたが,以下の図をご覧ください.
![](https://assets.st-note.com/img/1729926526-b3JUPWr6vxnmH49EkjYpcGwR.png?width=1200)
(国税庁 酒レポート令和4年3月より引用)
この図からわかる通り,特定名称酒の生産量は平成元年以降大きく変わらず徐々に減少しています.
つまり,特定名称酒の消費に置き換わっているというよりは,日本酒全体の生産量が減少した結果,特定名称酒の割合が増えたに過ぎません.
高付加価値商品の需要増加と捉えることもできますが,全く楽観視できる状況ではありませんね.
さらに酒類業界の国内市場も日本酒に限らず徐々に縮小しており,酒類全体の課税移出数量は平成11年をピークとして減少を続けています.
したがって,商品の差別化や付加価値の向上,海外など新たな市場の開拓,さらにそれらを持続的に実現する技術の向上と伝承がこれまで以上に重要になってくるでしょう.
消費者に対してわかりやすく広く情報を届ける役割を担うのが「唎酒師」や「SAKE DIPLOMA」であるとすれば,より深く専門的な情報を届ける担い手も存在するべきと考えます.
私が持つ化学の知識を生かしてその役割を担えるよう,私自身が日本酒を楽しみながら,ある意味マニアックな楽しさも伝えていければと思います.
次回は日本酒の主要原料の一つである「米」についてまとめたいと思います.
今後の更新も是非チェックしていただければ幸いです.