建築物が語りかけてくる
家のリフォームをしていると、建物が語りかけてくる事がある。
一見、どうしてここはこんな風になっているんだろうと不思議に思う様な箇所でも、リフォームを進めると、あーだからこうなってたんだ!と気付く様なことが度々ある。
そんな時、先人も苦肉の策でこうしたのかな、と頭の中を覗き見しているような、「これでも頑張ったのよー。」と語りかけてくるような感覚になる。
銀閣寺は、銀色で無いのになぜ銀閣寺なのか?
室町幕府3代目将軍で財政も豊かだった足利義満は金閣寺を建立した。
金閣寺と対比して銀箔を貼るつもりだったが、財力が衰えていたため銀箔が貼れなかった、というのが通説であるが、修復作業の時にある発見があった。
外壁に黒い漆が塗られていた痕跡が見つかったのだ!
漆はお椀やお盆、重箱などに使われる樹液の伝統的な塗料で、建物の外壁に使うなどありえない。
なので銀閣寺は銀箔は無くとも、黒光りしていたようである。
今で言うと黒塗りのレクサスの様に、爆ツヤ仕上げで光を反射していたことであろう。
この黒漆の発見があって合点がいった。足利義政は床の間に掛け軸を飾ったり、違い棚を作って茶器を飾るなど、侘び寂びの文化人であったからだ。
将軍としての力は無いが、センスは抜群なのである。
「どう?外壁に黒漆塗ったんだ〜。金箔貼るより格好良いでしょ?」という声が聞こえてきそうだ。
食事の汁椀か盆を見て思い付いたであろう事は想像に難くない。
もしかしたら、黒漆の上に蝶やトンボなど、四季の生き物や草花が描かれていたかもしれない。
また、銀閣寺に銀箔が貼られていたとか黒漆が塗られていたなどを伝える文献が無いのも頷ける。
名探偵コナンの映画をこれから観るという人に、犯人を教えるぐらいKYだからだと思う。
銀箔は貼られていないのに銀閣寺とはこれいかに?百聞は一見にしかず、とくと見てご覧なさいという事だ。
建築物は、語りかけてくる。
遠い過去に生きた人物とも対話できる。
あなたにもそんなエピソードがあれば、ぜひコメントで教えて欲しい。