編集者とライターとはどんな仕事で、何が求められるのか?
私は、ビジネス系のwebメディアで編集者をしています。
具体的には、インタビュー記事(企業の方や大学の先生などが多い)を企画し、外部のライターさんと一緒に取材に行き、ライターさんが書いた原稿をチェックして、世の中に出すという仕事です。
こう言うとよく聞かれるのが、「自分で記事は書かないんですか?」「編集者とライターってどう違うんですか?」「どんな人が向いているんですか?」といった質問。
知らない人からすると、なかなかイメージしづらい仕事のようです。
こうした質問への答えとして、あくまで私自身の私見にはなりますが、今後、下記の3点をご紹介したいと思っています。
① 編集者とライターの違いとは? 仕事内容は?
② それぞれ、どんな人が向いているの?
③ どうすればなれるの?
まず、今回は一つ目の、編集者とライターの違いと、仕事内容について。
これを知らないと、向き不向きやどうすればなれるのかもわからないので、手始めにご紹介できればと思います。
■編集者って?
「編集」という言葉を辞書で引いてみると、こんなことが書いてあります。
新聞,出版,放送,通信など一般にジャーナリズムの世界において,一定の志向性をもって情報を収集,整理,構成し,一定の形態にまとめあげる過程,またその行動や技術をいう。(ブリタニカ国際大百科辞典より)
つまり、意図をもって情報を集め、整理して構成を考え、何らかのアウトプットを生み出す人が「編集者」と呼ばれているよう。
アウトプットのかたちは、雑誌であったり、本(小説・まんが・実用書)であったり、新聞やテレビ、映画、そしてwebの記事であったりと、さまざまです。
ここで重要なのが、編集者は自分自身の主張や意見をそのまま自分で発信する人ではないということ。
例えば、私の担当しているインタビュー記事の編集では、私自身がインタビューの受け手になるわけではありません。
「こういうテーマで話せる人はいないかな……」と探したり、「この人面白そうだな」という人を見つけたりして、その人の魅力を最大限に伝えられる方法を考えながら、コンテンツを練る。これが、編集者の仕事なのです。
書籍などでも同じです。編集者は自分で小説を書くのではなく、作家さんが執筆をするためのアドバイスや、サポートを行う。
もちろん、原稿をつくる上では、文章の読みやすさや内容のわかりやすさという観点は重要です。編集者にも、日本語で文章をつくる一定のスキルが求められます。
とはいえ、文章を書くのがうまければ、編集者になれるわけではありません。いくら文章がわかりやすくても、内容が面白くない記事は見てもらえませんよね。そもそも、土俵にすら立てないわけです。
そのため、編集者はまず何より「企画力」が問われる仕事なのです。
■ライターと編集者の違い
~それぞれの仕事の流れ~
では、ライターはどんな仕事なのでしょうか。
これを考えるには、コンテンツが生まれるまでの流れを知る必要があります。
一例として、インタビュー記事が世に出るまでの流れを整理してみましょう。
メディアによって多少違いはありますが、「■」を付けているのが主に編集者の仕事、「★」を付けているのが主にライターの仕事です。
■インタビューを企画する
誰に、何を聞くかを考え、企画書を作ります。誰に読んでほしいのか? その人にはどんなテーマが刺さるのか? 読者の視点を意識しながら、企画を練ります。
■インタビューを依頼する
企画書をもとに、取材を依頼します。
企業であれば、広報部門が窓口になることが多いです。
■ライターやカメラマンと日程を調整する
取材が決定すれば、まず日程を調整します。ここでライターの登場です。写真を入れる記事であれば、カメラマンを手配することもあります。
■(★)取材の準備をする
取材に向けた下調べや準備をします。インタビュー対象の出している書籍があれば読んだり、他のインタビュー記事をチェックしたり。いきなり取材に臨むと失敗してしまうので、この準備はめちゃくちゃ大切です。
■(★)取材をする
取材当日です。うちのメディアでは、編集とライター、カメラマンの3人で取材に行くケースがほとんどです。
取材中の質問はライターが行うことが多いのですが、編集者が追加で質問をしたり、自分で取材したりする場合もあります。
★原稿を作成する
取材の内容をもとに、ライターが原稿を作成します。
■原稿を確認する
ライターの描いた原稿を、編集者が確認します。文章の読みやすさや話の流れ、誤字脱字などがないかチェックします。
※誤字脱字や内容に誤りがないかの確認を、「校閲」という部門を設けて別の人が確認することもあります。石原さとみさんの校閲ガールでもおなじみですね。
■原稿をインタビュー対象者に確認してもらう
作成した原稿を確認してもらいます。メディアによっては、この最終チェックなしで世に出すケースもあります。新聞などは、基本発行前の事前チェックはないようです。
■完成!
記事を世に出します。
ずいぶん簡略化していますが、こんな感じです。
いかがでしょうか。「思っていた仕事と違う」と感じた方もいるかもしれません。
これを見ていただくとわかる通り、インタビュー取材における「ライター」とは、実際に原稿を執筆する人のことを指します。さらに自分で取材ができると、仕事の幅はより広がります。
ただ、まとめ記事や解説記事、イベントのレポートなど、取材を行わない記事やコンテンツもあったり、取材を編集者が行うメディアもあったりするため、取材ができなくてもライターを名乗る人もいます。
また、力量のあるライターやベテランの場合には企画からコンテンツ制作に関わり、編集者的に仕事をすることもあります。
その人のスキルや力量によって、どこまでを担当するかには個人差があるのです。
■ライターと編集者の違い ~働き方~
ライターと編集者の違いを考えるうえで、もう一つ重要なのが「働き方」です。なぜなら、両者の働き方は大きく違うからです。
一部、例外はあるものの、基本的には多くのライターは、個人(フリーランス)として仕事を受けています。いわゆる、フリーライターというやつですね。
一方、編集者は特定のメディアの担当として、企業に所属することが多いようです。編集者はメディアの特性を深く理解し、企画を行う必要があるため、「○○編集部」として企業が抱えていた方が都合がいいのです。
まれにフリーの編集者もいますが、こうした人は社外からでも担当するメディアを理解し、提案ができる人。また、ネームバリューや実績から、「この人に編集を任せたい」と思わせる人でなければなれません。
また、今はフリーで編集者をしている人のほとんどが、もともと企業内で編集者の経験を積んでから独立をしています。スキルを身に付け、コネや人脈をつくることで、社外からでも編集の仕事ができるようになるのです。
こうした背景を踏まえると、それぞれのメリット・デメリットが見えてきます。
まず、企業に所属していないライターは、自分の好きな時間に、好きな場所で働くことができます。長い休みも調整しやすいでしょう。誰かのマネジメントを受けることもありません。※その分、自己管理が必要です。
一方、仕事がなくなると食っていけなくなってしまうという不安定さが、ライター職のデメリットです。住宅ローンなども組みづらい。その点、企業に所属する編集者は、成約には縛られますが、安定しています。
どちらを選ぶかは、何を重視するかによっても変わると思います。
ということで、いろいろとお話してきましたが、これらはあくまで「傾向」のお話です。同じ編集者、同じライターでも、企業や人によって仕事の仕方や環境は異なりますので、あくまで私の一意見として受け止めていただければと思います。
次回は、「編集者やライターに、どんな人が向いているのか」
次々回は、「どうすればなれるのか」をご紹介します。
お楽しみに~!
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