『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』から学ぶトラウマとの向き合い方

※作品のネタバレを少々含みます。
こんにちは!

 最 金曜ロードショーで、ハリーポッターがまた放送されたね!

 僕の地域では視聴出来なかったから切なさを埋めるために原作を読んでいたんだけど、やっぱり不朽の名作は時が経っても衰え知らず。その上、昔観た時と今観た時とでは、同じ作品でも得られるテーマが全然違ってくるから、これもまた面白い(´-ω-)

 さて。

 そんなハリー・ポッターシリーズの3作品目にあたる、アズカバンの囚人について、ちょっと気になることがあったんだ。

要は、
『ディメンターとパトローナスの関係は、現実世界のトラウマとの向き合い方に似ている』
っていうこと。

 というわけで、本作のシーンを心理学的に分析していくね。

本作のざっくりとしたあらすじ

 アズカバンの囚人をざっくりとまとめると、こんな感じ。

  1. 指名手配犯のシリウス・ブラックがアズカバンから脱獄した。

  2. シリウスは魔法界に潜伏している為、ホグワーツにアズカバンの看守でもあるディメンターが配備される。

  3. ディメンターは特にハリーに強い影響を与えていた為、特別措置として、闇の魔術に対する防衛術の先生であるリーマス・ルーピンから『エクスペクト・パトローナム(守護霊よ、来たれ!)』の呪文を教わる。

  4. シリウスは実は冤罪だった為、ハリーは彼を助けようとする。

 という流れになってる。

ディメンターの性質とハリー

 ディメンターについて簡単に説明するね。

 ディメンター(吸魂鬼)は昔闇の魔法によって作られた生物で、アズカバンに投獄された囚人を見張る看守として機能している。彼が近くに現れると、周りの空気は冬のように冷たくなり、まるで『希望や光が吸い取られたかのような感覚』に襲われるんだ。

 ディメンターは、人の幸福な記憶を吸い、『最も辛い記憶』を引き出し、精神的にダメージを与える力を持っている。

 作中ではじめてディメンターが現れた時、強い影響を受けたのはハリーだけだった。

 理由は単純。ハリーは幼い頃、ヴォルデモートに両親を殺されたというトラウマがあるよね。ディメンターの『最も辛い記憶を引き出す力』によって、その時の記憶がフラッシュバックしてしまったんだ。もちろん、ヴォルデモートとハリーとの繋がりによって、彼自身が魔法的に敏感だった、というのもあると思うけど、今回の話とは関係ないので割愛。

エクスペクト・パトローナム

 ディメンターを退ける唯一の方法は、全シリーズを通しても最も有名であろう、『エクスペクト・パトローナム(守護霊よ、来たれ!)』の呪文を唱えること。

 強い幸せな記憶を鮮明に思い出しながら唱えることで、強い光を放つ守護霊(パトローナス)が現れ、ディメンターを追い払う力がある。

 ハリーのパトローナスは牡鹿。これは父親のジェームズが動物に変身する際牡鹿になっていたことに由来する、とてもエモーショナルなシーンなんだけど、これも割愛。

分析

 ここでポイントとなるのは以下の2点。

  1. ディメンターは『ネガティブ感情やトラウマ』の象徴であること。

  2. パトローナスは『ポジティブ感情や幸福な思い出』の象徴であること。

心理学的ディメンター

 ディメンターは、過去のトラウマや絶望感を引き出す存在。心理学でこれを表すと、強烈なネガティブ感情が湧いたとき、記憶や感情のフラッシュバックが起きるようなもの。
 例えば、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患うと、過去のトラウマが頭の中で何度も繰り返すようになるっていうのがあるんだけど、心理学的ディメンターはこれに近いんだよね。

心理学的パトローナス

 一方、パトローナスは強い幸福やポジティブ感情でディメンターを追い払う存在。これを心理学的に表現するなら、レジリエンス(困難を乗り越える力)とか、リフレーミング(現状を理解し、ポジティブに解釈しなおすこと)が近いかな。心理学では、ポジティブな思い出や目標を持つことが、メンタル強化やトラウマ克服に繋がるって言われているんだよ。

闇の魔術(ネガティブ)に対する認知行動療法

 原始時代の生存戦略として、人はネガティブ感情や恐怖に襲われると、頭の中でそれを何度も繰り返してしまうようになっている。

 でも、ポジティブな記憶や未来への希望を思い出すことで、その気持ちが和らぐことがある。

 ディメンターとの戦いもまた、『辛い時こそ、自分が大切にている幸せな思い出やポジティブな心を思い出す』ということを、反復練習させられているよね。丁度あんな感じなんだ。

 これはメンタルの鍛え方的にも理にかなっていて、精神病を緩和させる『認知行動療法』でも、ひとつの苦痛に対して向き合い、幸せと照らし合わせて追い払う、という方法があったりする。

おわりに

 ディメンターとパトローナスの関係性を見るに、アズカバンの囚人でハリーがルーピンの指導の元行っていた修行は、ハリーがトラウマを克服するための認知行動療法だったとも言える。

 もちろん創作ではあるのだけど、トラウマや目の前の恐怖に直面して怖気付いている人は、今一度、自分の人生のなかで最も幸せな記憶を思い出して、

『大丈夫、自分の未来はまだ明るい』
『この程度の苦難は乗り越えて今生きてるんだ』
『所詮ディメンターなどボロい布きれよ』

 なんて口に出してみよう。

 エクスペクト・パトローナムで生まれるパトローナスの形は千差万別。

 みんなの心を守るパトローナスは、どんな姿をしているかな?


 今日はここまで。

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