文章をデザインする
はじめまして。
今年の4月からリオの制作部に移ってきた廣江です。
今リオではWebディレクター的なポジションで仕事していますが、前々職では書籍の編集者をやったり、並行してライターをやったりと、長年にわたって文章に携わってきました。
そこで今回は、そんなライティングの経験を活かして、「文章」をテーマにお話ししたいと思います。
文章は“言葉のデザイン”
突然ですが、皆さん、文章は書けますか?
こう聞かれたら、この国ではほとんどの人が「YES」と答えるでしょう。
基本的には、日本語を普通に使えさえすれば、文章を書くことはできるはずです。
しかし、こう聞かれたどうでしょうか。
「文章を書くのは得意ですか?」
これは、「NO」になる方がけっこういらっしゃるのではないでしょうか。
私の身の回りも、文章に苦手意識を持っている人は比較的多い印象です。
冷静に考えると言いたいことをただ書き連ねていけば文章になるはずなのに、なぜ難しいのでしょうか。
その答えは、この見出しにある通り、文章がただの言葉の羅列ではなく、「言葉を用いてデザインするもの」だからだと思っています。
「あなたの会社や扱っている商品やサービスのセールスポイントについて、A4用紙1枚にざっと書き出してみて」と言われたらサクッとできても、「チラシにして」と言われたらそう簡単にはできないですよね。
チラシを作ろうと思うと、ただの情報の羅列ではなく、デザインをする必要があります。
誰にでもできる仕事ではないからこそ、グラフィックデザイナーというプロが存在するのです。
文章も、これとまったく同じ。
イラストや写真、文字などビジュアル的な素材を用いるグラフィックデザインに対して、文章は素材が言葉(文字)に限られる、というだけのことです。
だから文章は、誰でも書けるけど、うまく書くためには練習や勉強、経験、センスなどが大いに関わってくる、ということなんですね。
後半は、文章をうまく書く(デザインする)ために意識すると良い要素について、いくつか簡単にピックアップして解説していきましょう。
文章をデザインするうえでの3つのポイント
目的とターゲット
文章を書く上で、まず最初にはっきりさせるべきは「何のための文章か」「誰に読んでもらう文章か」です。
契約書、自社サービスについてのセールスレター、友人へのメール。
身の回りにはあらゆる種類の文章がありますが、どれも文章の書き方は全く違いますよね。
ここまで極端に違えば誰でも自然に意識すると思いますが、実際はもっと細かく考える必要があります。
例えば、同じサービスを紹介するセールスレターでも、新しい顧客層を開拓するためのものと、普段から利用してくれているお客様への新サービスのお知らせでは、内容の角度が変わります。
業種やお客様との関係性によっては、丁寧な感じか砕けた感じか、など、文体にも影響があるかもしれません。
設計図
続いて取り上げるのは、設計図です。
建築物を建てるときに作られる設計図ですが、文章においても、設計がきちんとされていると、相手への伝わりやすさや読みやすさが格段に向上します。
設計図を組み立てるにあたって、まずは材料を揃えます。
例えば、その文章で最も伝えたい主張(結論)を中心にして、その話をするに至った背景、主張したいことの根拠、抱えている課題、これからのアクション、といった具合です。
結論に至るための要素として必要なものを集め、不必要なものを排除していくことで、無駄なく材料を揃えることができます。
文章を読んでもらう相手の状況やレベルに応じて、材料の取捨選択をすることも大切です。
材料が集まったら、あとはそれらの要素をどう構成するかを決めます。
ビジネス関連の文章では特に、「結論を最初に」と言われますが、個人的には必ずしもそれがベターだとは思っていません。
「なぜこの話が出てきたのか」や「そもそも何の話なのか」が先にないと、話が入ってこないケースもよくあるからです。
このあたりは内容によって完全にケースバイケースなのでセオリーというものはなく、読み手がどういう流れで読むとすんなり腹落ちするかが全てだと思っています。
トンマナ
「トーン&マナー(略してトンマナ)」とは、主に出版や広告などの業界で使われる用語で、トーン(色調や調子・雰囲気)とマナー(様式・作法)のことを指します。
これに一貫性を持たせることで、ブランドイメージなどが作り上げられます。
一般的には、広告物やWebサイトなどのビジュアルが伴うものに使われる概念ですが、私は文章自体にもそのまま当てはまると思っています。
「です・ます調/だ・である調」といった基本的なことから、文体の硬さ・軽さ、一文の長さやリズム感、漢字とかなの使い分けなど、さまざまな要素でその文章の印象がガラッと変わります。
とある本の紹介をしているこれらの文章。
書いてある内容は同じですが、どれも相手に与える印象はまったく変わりますよね。
例えば、【A】は広告や書店のポップなど、【B】は出版社などが関係者に送るメール、【C】は書評ブログ、【D】は友人・知人へのメッセージといった具合に考えると、それぞれ自然な感じがしますよね。
文章を載せる媒体(自社サイト、雑誌、メールなど)と、目的・ターゲットが決まったら、トンマナもある程度は自然に定まります。
そこから一歩踏み込んで、「読み手にどんな印象を与えたいか」という視点でトンマナを使い分けられると、書ける文章の幅がグッと広がるでしょう。
さいごに
あれこれとスキル的なことを書いてきましたが、文章を書く上で忘れてはならないのが、文章も他人とのコミュニケーションである、ということだと思っています。
文章を書くということは、誰かに何かを伝えるということ。
自分のためのメモであっても、それは未来の自分とのコミュニケーションです。
「わかりやすい! 熱意が伝わった!」と思ってもらえるか。
「言いたいことはわかったけど、知ってる話が多くて読む時間は無駄だった」と思われるか。
はたまた「わかりやすかったけど癇に障る」と思われるか。
たとえ同じ内容のことを書いていて、その内容が伝わっていたとしても、相手にネガティブな感情を抱かせたらコミュニケーションとしてはNGです。
文章を書くときは、何よりもまず読み手の立場に立って、相手がその文章をどう読んで、どう解釈するかを考える。
これがきちんとできるようになることが、いい文章を書くための第一歩だと思います。
皆さんも、次に筆をとるときは、ぜひ読んでくれる相手の顔を想像しながら書いてみてください!
今後記事を書く皆さんにも参考にしていただきたいですね!
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