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社交不安障害(社交不安症)について知ってほしい

社交不安障害(別名:社交不安症,Social Anxiety Disorder : SAD)という病気があるのをご存知でしょうか。
発達障害が社会に浸透し多くの人がその言葉を耳にするようになりましたが、この社交不安障害は現在もあまり知られていません。
今回の記事では、自分の経験も交えながらこの病気についてご紹介したいと思います。


社交不安障害とは


主な症状としては、
・スピーチなど人前に出ることを極度に恐れる
・人前でご飯が食べられない
・人前で手が震えて文字を書くことが出来ない
・人前で赤面してしまうことがあるため人混みを避ける

簡単に言ってしまうと「極度のあがり症」です。
社交不安障害の中にもいくつか種類があり、症状が表れる場面に応じて「スピーチ恐怖」「会食恐怖」「書震」などに分かれます。
(書震とは、人前で文字を書くときに手が震えてしまうことを言います)
いくつも併発している人もいれば特定の単一の状況でしか恐怖を感じない人もいます。

かつては赤面恐怖症や対人恐怖症と呼ばれていて、個人の資質や性格による問題だと思われてきました。
「みんなの前で挨拶をする時に緊張してしまう」・「赤面してしまう」は誰にでも当てはまります。
しかし、社交不安障害を抱えた人の場合は、緊張しすぎてしまい息が苦しくなる・頭が真っ白になってしまう・足がガクガク震える・涙が出てくる、という身体的な反応が表出されます。
うつ病がその人の「甘え」でなく脳の病気であるという認識が一般的になりましたが、この社交不安障害も個人の資質や性格でなく脳の機能の異常によるものです。

社会に出ると、人前で話したりご飯を食べたりという機会はごく当たり前にあり、「苦手だから」という理由で避けることは困難です。
そのため、社交不安障害を抱える人は社会に出ることを避け、就職や昇進を拒むケースが多いです。
実際に、社交不安障害の人はそうでない人と比較して、「年収が大幅に低い」「重要なポストに就いていない」というデータがあるようです。
本来享受できるチャンスを不安によって回避してしまうのです。

社交不安障害では身体的な反応が表れます。それが他人に気づかれることを恐れてしまい、さらに不安を悪化させます。負のスパイラルであり、対処がなかなか困難な病気です。

「身体に出た反応が他の人から見て分かっちゃったらどうしよう」というところが、また不安になるという問題があります。人に注目されて恥ずかしい、恥をかいてしまうのではないか、他の人からダメ出しされるのではないか、評価されるのが怖い、というところがあると思います。

思春期の発症が多い「社交不安症」 治療のポイントは 精神科医・清水栄司さんに聞くhttps://www.nhk.or.jp/heart-net/article/699/


原因と対処法


原因は、扁桃体の過活性によるものです。
扁桃体は脳の中心部分にある原始的な部位で、不安を司ります。
震えなど身体的反応をもって「恐怖から逃走せよ」という命令を出します。
扁桃体は記憶を司る海馬と結びついています。「過去に似たような場面で恥をかいた」という記憶が海馬から扁桃体に信号を送り、恐怖や不安を引き起こします。

似たような病気としてパニック障害があげられます。
パニック障害は、人混みなど狭い空間に身をおくことに強い恐怖を感じます(広場恐怖症)。
社交不安障害とパニック障害が共通している点は「予期不安」によって起こるという点です。
予期不安とは、「また同じ状況が発生した場合に恐怖で呼吸困難や動悸になるのではないか」という予想により症状が表れることです。
社交不安障害においても、「また声が震えて恥をかくのかもしれない」という予期不安によって再度同じ症状が表れます。

そのため、社交不安障害には「場慣れ」が通用しません。
むしろ、悪循環が生じます。これが厄介なところです。
一度失敗すると、その記憶を何度も反芻し、さらにその記憶により次の機会にも恐怖を感じ、再度失敗を引き起こしてしまいます。

社交不安障害は幼少期や成人期に発症することが多いです。
社交不安障害を抱える人の5割が10歳頃までに発症し、9割が23歳までに発症すると言います。
柔軟な思考が困難でトラウマ化しやすい子どもにとって、大きな恥をかいた経験は記憶に残ります。
悪循環により治すことが難しく、社会に出た後も同じ症状で悩み続けてしまうのです。

また、セロトニンやドーパミンの不足によるものだとも言われます。
発達障害の人は、脳の構造としてセロトニンやドーパミンの分泌に異常があり不安や恐怖を感じやすいと言われていますが、社交不安障害は発達障害の人に発症しやすいと言われています。

対策には、薬物療法と認知行動療法が効果的だと言われます。
薬物療法ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使用することが多いです。
また、認知行動療法により、病気や症状について理解を深め、不安な場面での悪循環を整理します。
自分に向いてしまう意識を周りに転換する練習を行い、症状が現れてしまう場面を段階的に試しながら、不安や恐怖を感じる環境に慣れていきます。
近年は、感覚や意識を外部に向けるマインドフルネスも注目されているようです。

治療のポイントについてはこちらのリンクがおすすめです。


私の場合


私の場合は、会食恐怖や書震(手の震え)などはありませんが、人前で話すことに対して恐怖を感じてしまいます。
自己紹介やスピーチの場面では息が苦しくなり膝が震えてしまいます。
頭が真っ白になり涙目になり何も話すことができません。
次の日の仕事のプレゼンや朝礼だと考えると、前日から心臓がバクバクし生きた心地がしません。
今後、会社で重要なポストに就くことで今より会議での発言やスピーチが増えると考えると、一生昇進せずに平社員のままで良いと考えます。

高校生の頃から人前で話すことに対して恐怖を感じていました。
もともと外交的で社交的だった自分は、小・中学校の頃はむしろ目立ちたがりでした。
友人も多く、中学校の頃は生徒会長も務めて、みんなの前で一発芸を披露したりしていました。
しかし、高校生の頃から状況が一変しました。
県内一の進学校に入り、周りが自分より優秀な人ばかりで劣等感を感じやすくなったからかもしれません。
文化祭の実行委員に入り、全校生徒の前でスピーチをしなければいけない機会が多くありました。
それまで難なくこなしていたスピーチの場面で、ある日たまたま緊張してしまい頭が真っ白になってしまったことがありました。
それを友人に笑われてしまい、それを気にし続けて、人前で話すことに恐怖を感じるようになりました。

その後、大学入学後もゼミやサークルで全く発言しなくなりました。
「あいつは何も考えていない」と思われるのがすごく辛かったです。

社会に出た後も、スピーチや挨拶を避け続け、自信満々にプレゼンを行う同期を見ては「普通の人が当たり前にこなせることが何故自分にはできないのか」と自己否定を続けます。
会議でも話を振られると、頭が真っ白になり何も言葉が出てこなくなります。
その後の一人反省会で記憶を反芻し、社会に適合でなきない自分を責め、一人で落ち込みます。

発達障害を抱える自分は、完璧主義的なところがあり、ポンコツで無能なわりには、どんな場面でも「ちゃんとやらなきゃ」という思いが強いです。
そのため失敗した自分を許すことができません。
さらに反芻思考も多く、失敗の記憶を反芻しつづけ自分にダメージを与えています。

社交不安障害を知ったのは社会人になってからでした。
たまたま読んだ本でこの病気のことが書いてあり、自分がこれに当てはまることを知りました。
初めて知った時の感想は、「自分が悪いわけではないんだ」という安心でした。
脳の暴走で身体に症状が出ることを知り、自分の甘えや「心の弱さ」が原因でないことに安堵しました。

今はコロナが落ちつき仕事で対面での会議やスピーチの機会も増えてきたため、少しずつスピーチの機会に慣れようと思い、心療内科に通い投薬を行いながら治療を続けています。
私の心に根差した恐怖や不安は非常に強く、スピーチ前に抗不安薬を飲んだところで緊張が軽減しリラックスしてお話ができるというわけではありません。
でも治療はまだ始まったばかりです。
気長にやっていこうと、どっしり構えています。

※ 2023年6月時点で、こちらの本のワークを参考にしながら自力で治療中です。

また同時に、この病気が社会に広まってより多くの人に認知されることを願っています。
緊張してうまく喋れない人や人前でご飯を食べることができず逃げ出してしまう人がいても、変な人として見るのでなく温かく見守ってほしいと思います。
この病気の辛さは当事者にしかわかりません。
その辛さを想像してあげて、嘲笑ったり責めたりせずに、彼らがチャレンジできる環境を作ってほしいです。
社交不安障害を抱えている人が、気持ちが楽に、そして、堂々として生きられる社会になることを願います。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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