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新薬師寺、レベルが違う

奈良県奈良市にある新薬師寺。「新」とあるが、創建されたのは奈良時代。本堂は奈良時代のもので国宝。本尊の薬師如来坐像は平安時代のもので国宝。本尊を囲むように立っている十二神将も国宝である。しかし辰年を守護するとされる波夷羅大将のみ江戸時代に壊れたものを補修したものなので国宝指定外。私は辰年だ。

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この中に魅惑の世界が広がっている。そしてこのお寺を参拝する方々は、その世界に魅了されて帰ってゆく。

しかしここにはひっそりとレベルの違うものが置いてあるのだ。

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まずはこれ。石標には「実忠和尚御歯塔」とある。境内のかなり目立つ場所にあるので、存在に気づく人は多いだろう。しかし細かい説明が一切ないため、これが何なのか分かる人はほとんどいない。

実忠和尚とは東大寺二月堂で毎年行われる「修二会」という仏事を始めた奈良時代の僧侶だ。その歯を納めたとされるのがこの五重石塔である。元は十三重塔で、二層目までが創建当時のものだそうだ。奈良時代の遺物がサラッと置いてある。おそろしいことだ。

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お次は石仏群。まずは地蔵菩薩立像。永正六年(1506)のもの。鹿児島でこのレベルのものが見つかると騒ぎになるが、ここでは新しい。いわば新入生だ。

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ここから様子がおかしくなってくる。パッと見ると上のお地蔵さんと変わらないように見えるが、こちらは鎌倉時代後期のものといわれる古仏である。

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こちらも鎌倉時代後期といわれている。デザインも独特で「地蔵十王石像」と呼ばれている。人々を救うため地獄の世界に現れた地蔵菩薩を表しているのだろう。こんなにしれっと置いていていいものではないような気がする。

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極めつけがこれだ。「如来立像」と呼ばれている。具体的にどの仏を表しているかわからないという。何とこれは奈良時代後期の石仏。もはや意味が分からない。奈良以外で見つかれば間違いなく文化財に指定されている。ここでは簡素な覆い屋があるのみだ。

決して文化財を大事にしていないわけではない。文化財や歴史との距離感があまりにも近いのだろう。

目の前に奈良時代の木造建築物と粘土の像が残っているのだ。バスに乗れば飛鳥時代に建てられたレジェンド「法隆寺」もある。さらには古墳だって無数に存在する。そりゃあ驚きませんよ。こっちは石だし。

よーく見て歩けば奈良には石塔が多い。

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こちらは東大寺にある墓塔。目の前を多くの観光客が歩いているが、立ち止まる人は誰一人としていない。

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こちらは元興寺にある石塔。とても面白いデザインで、しかもなかなか古い。ここには似た石塔が数百基置かれているため目立っているが、じっくり見る人はいない。みんな目の前にある国宝の本堂と飛鳥時代の瓦に夢中だ。

これらは2年前に撮った写真。そろそろ奈良の隠れ文化財に会いたくなってきている。世の中が落ち着いたらすぐに奈良に飛ぼう。

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