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記事一覧

【短編百合小説】君に幸せを

「普通に生きるって、なんだろね」
 寂しそうに彼女は言った。
 駅から歩いて15分の小さいけれど、住みやすいアパートの一室。ルームシェアという名目で借りた私と彼女の家。同棲のための、家。
 その片隅に積まれたダンボールに思わず目を向けた。
「普通に生きて幸せになって欲しいの、なんて笑っちゃうよね。これが私の普通で幸せなんだって言っても、それは違うって。子ども作って、孫を見せてって。そんなの、そんな

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【短編小説】君の見える時間

 夜が好きだ。
 人目を気にすることなく、君の隣を歩くことができるから。
 月明かり、瞬く星。
「ねえ、ミライ。私ね、あなたのこと大好きよ」
 君は珍しくそんなことを言う。
 月明かりが照らすのは、少し赤くなった君の顔だった。
「急になに?」
「慣れないことするもんじゃないわね……照れるわ」
 君は少しはにかみながら熱った顔をパタパタと仰ぐ。
 君はいつもそうだ。
 君はいつも、そうだった。

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【短編百合小説】眠る

 そのとき、私はバラが綺麗に咲いているという公園にいた。実際、バラは綺麗に咲き誇っていた。私の目を奪い続けるには充分な美しさだったと思う。でも、すぐに私の目はバラから離れた。
 バラ以上に美しい少女が、花壇の上に寝そべっていたのだ。その少女は、死んでいるんじゃないかと思うほどに青白く、細い指の先すらも動かなかった。その姿は、花よりも、星よりも、宝石よりも、この世のどんなものよりも、綺麗だった。私の

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