夏の終わりの冬瓜スープ
9月が始まり、まだ暑いとはいえ、日が落ちると虫が鳴き、長かった夜も涼しい風が吹くようになった。
夏の盛りの食べ物はたくさん思いつくし、秋の味覚もたくさん思い出すけれど、夏の終わりを感じさせる食べ物は少ない。
先日、冬瓜と鶏のスープを食べた。
私はこれが大好きなのだが、まだ暑い盛り、とろりとつややかにお皿に浮かぶ冬瓜を見て、「ヤッター冬瓜だー!もうこんな季節なんだね」母に呼び掛けて既視感。
毎年これをやっているような気がする。
これは私の持論だが、冬瓜のスープは鶏に限る。
きらきらと金色の油がうっすらと表面をおおっていて、冬瓜の皮の透けた薄いみどり色がやわらかにしずんでいる。そっと箸で引き上げると、ふわあっと広がる香り。かじれば、ほこほこと湯気が上がる。柔らかな鶏肉の美味しさ。スープの優しい滋味が、おなかにしみわたる。
冬瓜の好きなところは、じゅわっと水分を頬張ることができるところ。言わば、スープを食べられるところだと思う。
冬瓜、大根、瓜、ズッキーニ……肉質のつまった、時に柔らかく時にジューシーな野菜の懐の深さが大好きだ。
そもそも、冬瓜と呼ぶのに夏が旬、秋の季語。
冬まで貯蔵できるから冬瓜と呼ぶそうだけど、何とも不思議な立ち位置である。
でも、夏が旬なのにとろみのスープが似合うあたり、やっぱり君は冬瓜なんだな。