【連載2】二度目だから
せっかく転生した世界でも、私は平凡な才覚で生まれた。
王宮の兵士の父と、武器屋の娘の母の間に生まれた私は、幼いころより剣を遊び道具として育ち、いずれは勇者として、また魔法の才能がなければ勇者をサポートする戦士として、活躍することを夢に見てきた。
しかし、残念ながら、この世界でも遺伝というものがしっかり機能していて、私の剣の技量は父の職業である一般兵士のそれを大きく上回るものではなく「ちょっとだけ武器の取り扱いに慣れているだけの兵士見習い」として、16歳の朝を迎えることになった。
「起きなさい、今日は王宮に行く日でしょ」
母親に起こされた私は、今日から王宮の守備兵として登城する、わけではなく、母親には秘密で、王が募集した魔王討伐隊に志願したのた。
今日、私は王に謁見し、この国を救う旅に出かける。
「夜勤のお父さんとは会わないかしら?まだ新人なんだからあんまり無理しちゃだめよ。お弁当、ここに置いとくわね。」
城の夜間守備兵として登城中の父のことも気にかけながら、息子の初出勤にあれこれ世話を焼こうとする母親の声を聞き流しながら、私は決意を新たにする。
次、この家に帰ってくる時は「凱旋」の時だ。
転生でこの世界に生まれた私にとっては、この16年間はまさしく「人生のやり直し」だった。
前世と同じ、力も敏捷性も並、残念ながら魔法の才能もなかった私ではあったが、唯一、他の同世代の者たちと比べて違いがあるとしたら、それは人生に対する「悔い」を一度味わったことであろう。
何者にもなれなかったという経験をしたことによって、私は、一種の「あきらめ」の感情に近い、極めて冷静な判断力を得た。
己を過信せず、未来に過度な期待をしない。
努力をしたところで叶わぬ目標を夢見ることもないが、ただ、努力を怠った結果も知っているので、最悪な結果を避ける知恵も兼ね揃えている。
人を必要以上に信用せず、かといって疑いすぎることもない。
見た目は16歳だが、精神年齢は人生の大ベテランだ。
己の限界などとうに見極めてはいたが、それでも私は挑戦する。
前世の人生で、何一つ高望みをせずに平凡に生きようとし、そして突然終わってしまった私にとって、与えてもらったこの「転生」というボーナスステージは、前世へのそこはかとない「罪悪感」を拭い去るものだと思っている。
「俺なんて」なんて言葉は言い飽きた。
何かを成し遂げられるような気もするし、すぐにどこかで息絶えてしまうような気もする。
だが、それならそれでいい。
一度目の人生にはなかった「紆余曲折」を求め、私は家を出た。