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つかみですべてが決まる
いつもお世話になっています。作家の浜口倫太郎(@rinntarou_hama)です。
漫才でつかみという言葉があります。
簡単にいうと、漫才での最初のボケですね。
ここで笑いがとれると、お客さんは漫才の中に入ってくれます。
『お客さんの心をつかむ』という意味で、つかみですね。
つかみに失敗すると、漫才はほんとにウケないんです。
このつかみの概念は、小説や漫画、映画、YouTubeなどあらゆるエンタメで使われます。
YouTubeだとサムネイルですね。
サムネイルで面白いそうだと思ってもらわないと、再生ボタンを教えてもらえないんですよね。だから人気ユーチューバーは、このサムネイルに工夫に工夫を重ねています。
ちょっと前にタイトルの付け方に関する記事を書きましたが、小説においてはこのタイトルがつかみでもありサムネイルにもなります。
タイトルを見て、「面白そうだな」と思わせるってことですからね。
ただ1ページをめくってもらってからがつかみの本番になります。
ここで面白いと感じてもらわなければ、ちょっとだけ読んで終わりです。つかみが失敗というわけです。
小説などでよく使う手法としては、プロローグですね。
作品の中で一番派手なシーンを最初に持ってくるんです。
例えばミステリーとかだったら殺人シーンですよね。目立つシーンを持ってきて、読者に興味を惹かせるんです。
今冒頭で殺されるシーンってむちゃくちゃ多くないですか。僕も二作品ほどはこの手を使っていますね。
だからこれだけではつかみが不十分になっています。
さらにここで『謎』もうまく作ります。
例えばですが、殺された人物が裸でブラジャーをしている中年男性としましょう。
じゃあ、「えっ、なんでブラしている男性が殺されたの?」って疑問を持つじゃないですか。絵も派手で印象的なシーンになります。
その疑問を解消したくて、読者はページをめくってくれるんです。
いわゆる人間心理を利用しているんですよ。これってミステリーじゃなくても、SFでもラブストーリーでも冒険小説でもどんなジャンルでも使えます。
派手なシーンと謎で読者の心をつかむわけです。
昔はここまでそんな手法を使ってませんでした。小説でも時系列通り書いている作品が多かったです。
それほど現代は娯楽があふれ、現代人が忙しくなっている証拠なんでしょうね。
だから小説でも1ページで、いや1行で面白さが判断されるんですよ。
冒頭の1行で、「巨大なパンダが俺のスマホでYouTubeを見ていた」とか書いていると、「どういうこと?」って気になるじゃないですか。
伊坂幸太郎先生の『重力ピエロ』という小説の冒頭は、『春が二階から落ちてきた』です。
これを読んだら、「えっ」ってならないですか? 意味がわかんないですよね。でも次の文でその意味がすぐに判明します。
つかみのお手本のような一文ですよね。
プロの作家ってそれぐらい冒頭に気を使ってるんですよ。
逆にこの工夫がない作品はたいてい面白くないんですよ。僕も読むかどうかの判断は、最初の数ページで決めてしまいますね。
つかみは本当に大事です。
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