【連続note小説】日向食堂 小日向真司63歳
あおいが病に倒れた。
文枝と同じ末期ガンだった。
病室のあおいを真司は毎日献身的に看病した。
しかしあおい日に日に弱っていった。
病床のあおいが真司に語り掛けた。
「もうトゲはなくなった?
いろんな人からすぐにもらってくるからねぇ、真司君は。
まだあるなら抜いてあげたいけど、もう無理みたいね」
あおいは真司の心に刺さったトゲを、時間をかけて抜いてきた。
誰よりも真司のことを理解してくれた人だった。
「もうそんなもんないよ、全部抜いてもらったから。
もう大丈夫だ、安心していいよ」
あおいが永眠した。
真司は生涯でたった一つの大切な宝物を神様に召されてしまった。
「あおいを、あおいを連れて行かないでくれ」
真司の願いは儚くも神様には届かなかった。
そして真司は人生で二度目の嗚咽をした。
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<続く…>
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