【連続note小説】日向食堂 小日向真司8歳
文枝の様子がおかしくなったのはこの頃だった。
真司はあれほど手が掛からなかったのに、歳之にはほとほと手を焼いた。
気に入らないことがあるとすぐに泣きだし、言うことを聞かない。
それに誠司は仕事が忙しくてなかなか家にいない。
文枝のストレスは限界を超えていた。
ある日、ほんの出来心で立ち寄ったパチンコにそれからも通い出すようになった。
それがエスカレートして、真司と歳之を家に置いたまま出掛けることが増えた。
ひどい時は何時間も返って来ない。
ある日のことだった。
文枝がパチンコ屋から出てくると入り口に真司が立っていた。
一体、何時間そこに立っていたのだろうか。
真司は真顔だった、涙は流していない、しかし目だけが泣いていた。
文枝は思わず声をあげて真司を抱きしめた。
そして泣いた。
でも真司は泣かない。
「ぼくが泣いたら、お母さんが悲しむから、だから泣けない」
文枝は立ち直り、元の生活を取り戻した。
8歳の真司は母を窮地から救った。
<続く…>
<前回のお話はこちら>
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