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走れっ、オンボロ軽自動車!

これまで車は8台乗り換えてきた。
どの車にもそれぞれに思い出がある。

初めて買った車は赤色の軽自動車。
現場仕事に使ってしまって、あっという間にボロボロになった。

キムタクがコマーシャルに出演していた車も買ったことがある。
ただただキムタクが運転している姿が、カッコよかったからだ。

家族が増えてミニバンに乗っていたこともある。
家族全員を乗せていろいろな所に行った。
この車は酷使し過ぎたのか、エンジンが動かなくなって廃車になった。

話は変わるが、我が家は山の上にあるから周りは坂道しかない。
自転車は全く使えないし、徒歩での移動も困難だ。
だからどうしても車が2台必要になる。

妻が買い物など日常的な使う軽自動車があったのだが、大きな事故で廃車になってしまった。

それからは電動アシスト付き自転車を借りて、なんとか車一台でしのいでいたのだが、やはり不便さは払拭できない。

新車を買うにしても、急には資金を用立てられない。

そこで知り合いの紹介で中古の軽自動車を買うことにした。
価格はなんと20万。
装備はナビゲーションどころかCDプレーヤーも搭載していない。
見るからに古さがわかる車だ。
しかしこの車が大活躍することになる。

その当時、息子が少年野球チームに所属していた。
我が家から練習場までは遠く、遠征となれば車で一、二時間走ることはザラにあった。

その軽自動車は年式がかなり古く、新車を買うまでのつなぎとしか考えていなかった。
すぐに壊れるだろうと思っていた。

しかしどれだけ酷使しても走り続けてくれた。
毎日の買い物だけではなく、週末の野球の遠征にもその軽自動車を使っていた。

どれだけの距離を走ってくれただろうか。
決して乗り心地は良くなかったが、たった20万円で買った車なのに、とてつもない距離を一度も故障することなく走ってくれた。

息子が野球チームを退団すると同時に、新車の軽自動車に買い換えることになった。

別れの時は何か込み上げてくるものがあった。

我が家の苦しいときに、老体に鞭を打つようによく頑張ってくれたあのオンボロ軽自動車のことは、ずっと忘れない。

小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。