【連続note小説】日向食堂 小日向真司61歳
たまの休みなのに真司は岡崎と長友に連れられて、釣りに行くことになった。
趣味などなかった真司は、もちろん釣りもやったことがなかった。
最初は断ったが、二人にせがまれてしかたなく行くことにした。
長友の車に乗せられて、近くの海へ。
岡崎に手取り足取り教えてもらって、釣り糸を海面に垂らす。
ただ魚が餌にかぶりつくまでじっと待つ。
一体何が面白いのだろうかと真司は思った。
真司はじっと浮きを眺め続けていた。
ふとあることに気が付いた。
じっと一点を眺めているだけなのに、眠気が全く起こらない。
いや一点に全神経を集中させている。
料理を作るときは、一度にいくつもの作業を同時に行うから、集中力は分散される。
真司はこれほど一点に集中することがなかったのだ。
何か今まで経験したことのないような感覚だ。
それと同時に、いかに自分が調理に集中できていなかったのか改めて気付かされた。
"集中力は分散させながらも、目の前の調理に一点集中する"
今の自分に欠けている。
帰りの車の中で、あんなに嫌がっていた真司が上機嫌だったことに、岡崎と長友は不思議な顔をしていた。
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<続く…>
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