【連続note小説】日向食堂 小日向真司9歳
誠司が死んだのは、鉄工所内での事故が原因だった。
クレーンで吊り上げた資材が荷崩れを起こした。
真下にいた作業員をかばって、助けに入った誠司がその下敷きになった。
救急車で病院に運ばれたが、すぐに息を引き取った。
小学校から引き戻されて、家の中に慌ただしく人が出入りしている。
真司は何も状況が飲み込めなかった。
ただ母が狂ったように泣いていることで、とてつもなくたいへんのことが起きたことだけはわかった。
告別式で文枝や祖父母が泣いている姿を真司は見た。
“なんで泣いているんだろう”
“なんでぼくはこんな所にいるのだろう”
“なんでお父さんの大きな写真が飾られているのだろう”
不思議に思えてならなかった。
真司に誠司の死を理解できなかったのではない。
心が自動的に理解する思考を停止していた。
9歳の真司が受け止めることができず、幼い心が自動的に防御した。
それから数日後だろうか。
なぜ父親が家に帰ってこないのだろうかと思ったのは・・・。
<続く…>
<前回のお話はこちら>
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