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忘れられない自転車は兄貴のお古

今はほとんど自転車に乗ることがなくなった。

と言うか、もう何年も自転車に跨った記憶がない。

子供の頃はどこに行くにも自転車に乗っていた。

友達と近所を自転車で走り回っていた。


生涯で何台の自転車を乗り換えただろうか。

思い起こしてみると、10台くらいかな。

確かな数字はわからない。


子供の頃に乗っていた自転車は、兄のお古だった。

弟の宿命だ。

でもそれが忘れられない自転車になった。

五段変速のサイクリング用。

それまでぼくは子供用の自転車に乗っていたから、兄が乗る自転車のデザインがカッコよくて仕方がなかった。

兄がその自転車に乗っている姿も様になっていた。

それがある日突然ぼくのものになった。

もう感動的だった。

当時のぼくには少し大きかったから、こけないように、うまく乗るために必死で練習した。

まだ小学校の低学年の頃だったから、友達たちもまだ子供用の自転車を乗っていた。

ぼく一人が大人用の自転車を乗り回していた。

友達たちはぼくの自転車を見て、とたんにサイクリング自転車を買い出した。

たぶんお父さんにおねだりしたんだろうな。

あっという間に、新品の最新モデルの自転車を買い揃えてしまった。 

最新モデルはなんと10段変速。

ぼくの自転車はほんの数日で骨董品扱い。

それでも何故だろうか。

友達の自転車を羨ましいとは思わなかった。

何食わぬ顔で骨董品自転車で最新自転車とレースをしていた。

10段変速なんかに負けてたまるか!、ってそんな意気込みだったなぁ。

たぶん、ただ単に兄のお古の自転車が好きだったんだろうな。

どんな新品の自転車よりも。

だから大切に乗り続けた。

確か高校生の時に廃車にしたが、この自転車のことは今も鮮明に覚えている。

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鈴々堂/rinrin_dou@昭真
小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。