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【連続note小説】日向食堂 小日向真司53歳

ある日、吾郎が真司に聞いてきた。
「オヤジさんの作る料理って、何であんなに美味しいんですか」
「さあなぁ」

吾郎の料理の腕も最近ではかなり上がっている。
それでも常連のお客さんは、真司の料理を目当てに日向食堂にやってくる。

皆、美味い、美味いと真司の料理を食べてくれる。
しかし当の本人がその秘訣を知らなかった。

確かにプロの料理人の吉田に料理を習ったが、それだけの理由ではなさそうだ。

吾郎は常連客の一人に思い切って聞いてみた。
「なんて言うのかなぁ、上手く言えないなぁ」
「絶品の味って訳じゃないんだけど、なぜかまた来たくなるんだよな」
「そうそう、後を引くんだよ、オヤジさんの料理って」
「理由なんてわからないよ。いつも当たり前みたいにこの店に来てるから」

どうやら料理の味だけの問題だけでなはさそうだ。
真司の料理には中毒性みたいなものがあるのだろうか。

ある日、稲本がふらっと日向食堂にやってきた。
吾郎は稲本に同じ質問をしてみた。
「愛情の問題だ。一人一人、おれの料理を食って元気になってくれ、幸せになってくれって、願いを込めながら作るから、そりゃ日本一美味い料理にもなるさ。おまえ、そんなこともわかってなかったのか」


真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く…>

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