そして子供たちは減ってしまった
ぼくが住んでいる町には、子供のためのちょっとしたイベントがある。
町と言っても、都会のように家々が無数のようにある訳ではない。
9月の満月の夜。
19時になると、町中の家の前にお菓子が一斉に置かれる。
小学生限定だが、子供たちが暗闇に紛れてお菓子を取っていく。
子供達はこの夜だけ泥棒になる訳だ。
当然ながら、親御さんも付いているし、懐中電灯も持っている。
泥棒と言うのはイメージだけのことで、本格的に泥棒に扮する訳ではない。
子供達はお菓子の入った箱を見つけては、家から持ってきた袋に詰めていく。
他の子の分も残して、取りすぎないようにするのが暗黙のルールだ。
2階の窓から子供達に見つからないように覗いてみると、夜の闇がそんな気持ちにさせるのか、子供達は家の人に見つからないように小走りで走ってきて、お菓子をかっさらうように袋に詰めて走り去っていく。
その様子がなんとも愛らしい。
子供達は代わる代わるやってくる。
どの子も申し合わせたように同じ行動を取る。
お菓子がなくなるとピタッと誰も来なくなる。
子供同士で情報交換でもしているのだろうか。
"あの家にはもうお菓子がないぞ"って感じで。
我が家の息子たちが小学生だった10年から15年前は、そんな風に子供たちが町中を走り回ってた。
近頃は町自体が高齢化してきたのか、子供の数がめっきり減ってしまった。
2階から覗いてみると、子供がやってくる間隔があまりに長い。
待っていられなくなる。
やっとやって来たと思うと、子供に覇気がないというか、元気がないと言うか、以前とは明らかに違う。
何とも寂しいことだ。
何でこんなことになってしまうのだろうか。
"もっとたくさんのお菓子を買っておくから、戻っておいでー"、って言ったところでどうにもならない。
寂しいけど、現実として受け入れなきゃいけないんだろうな。