【連続note小説】日向食堂 小日向真司48歳
「ねえ、お父さん、この子、ひょっとしてあの子じゃない?」
あおいがテレビの画面を指さして真司に大声で言った。
「だれ?」
「誰って、真司君が散々ご飯を食べさせてあげたあの高校野球やってたあの子よっ」
テレビの画面にはプロ野球の中継が映し出されていた。
真司はまじまじと画面を見たが、誰なのかすぐにはわからない、
「えっ、まさか、ひょっとしてあいつか?」
テレビ画面は躍動する一人のプロ野球選手を映していた。
大きな身体で威風堂々とプレーするその選手の顔・・・
“どこかで見たことがある”
それは真司が食事の世話をしてやったやせっぽちの高校生・本田利次だった。
彼はプロ野球選手になって活躍していた。
彼は真司が知らない間に夢を叶えていたのだった。
「あいつじゃないかぁ、ずいぶん身体がでかくなってるなぁ。
あのころとは見違えるなぁ。
しかもクリーンアップを打っているぞ。
散々練習したんだなぁ。
あれから10年か。
プロ野球選手かよ、よく頑張ったよなぁ」
真司は満面の笑みを浮かべて、画面を食い入るように見ていた。
「真司君、自分の息子じゃないんだから」
独り言が止まない真司に、あおいは思わず突っ込みを入れていた。
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<続く…>
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