搭乗ゲートを通れない原因を探れ!
アメリカへ海外研修に行った時の話だ。
建設業関係者三十人ほどの一団はアメリカの各地を転々とした。
現地の建設業者と交流を図り、現場も見学させていただいた。
当然ながら移動手段は飛行機になる。
飛行機に乗るためには、アメリカであっても搭乗ゲートを抜けなければならない。
その一団の中に、必ず搭乗ゲートで金属反応のランプが点灯する人がいた。
ここではその人をAさんと呼ぶことにする。
ちなみにAさんはお調子者で、皆を笑わせて一団を和ませる担当になっていた。
検査官がAさんの体を調べるのだが、何に反応するのか分からず、仕方なく飛行機に乗せてもらっていた。
研修の合間にナイアガラの滝を訪れることになった。
そこへも飛行機で移動するだが、またあのAさんが搭乗ゲートで引っ掛かった。
黒人の恰幅のいい検査官も渋い顔をしていた。
行動を共にしていた一団の人たちは、この際、原因を突き止めようと、数人掛かりでAさんの体を調べ出した。
Aさんは上着を脱がされ、ベルトを外され、シャツとズボンだけの姿にさせられ、搭乗ゲートを潜らされた。
しかし、またランプが灯る。
一体何に反応しているのか、Aさんは体の中に金属が埋め込まれているのかだろうか。
「あっ、わかったぁ!」
Aさんが突然大きな声を上げ、靴を脱ぎ始めた。
Aさんは嬉しそうな顔でその靴を皆にみせた。
何とそれは安全靴。
足の指先の部分が、鉄板で覆われていたから、それに反応していたのだった。
Aさんは靴をまた履き直して、足先だけをゲートの中に入れると見事にランプが点灯した。
黒人の女性検査官もさすがに笑っていた。
しかし、現場見学があるとはいえ、アメリカに行くのに日本から安全靴を履いて来るAさんの心境が誰にも理解できなかった。
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