【短編】一八番目の人形もどき
沢山の青色の人形がいました。私は一八(じゅうはち)番目の人形です。私は、他の人形達より片腕が短かった、片足が異様に長かった。頭が異様に大きかった。声の音質も他の人形達より雑音が混じってしまう。
それでも人形としては、一応は機能しています。だから、皆と並んでいます。誰が買ってくれるんだろう、どんな人が買ってくれるんだろう。皆とは違うけれど、沢山沢山楽しませてあげなきゃ。
周りの人形達より出来は悪いけれど、機能的にも劣っているけれど、それでも精一杯頑張ろう。一八番目の人形はそう思いました。
私は、周りの人形達より出来や機能的にも劣っているから、周りの人形達より若干値段が低かった。赤色の服を着た子供がやってきました、沢山の人形達が並んでいる中、その子供はお母さんに人形をねだりました。あの人形が欲しいと、私達の中で誰が選ばれるんだろう。
子供は兎に角人形が欲しかった。本当に欲しかった。どうしようもなく欲しかった。今すぐにでも欲しかった。けれども、お母さんはお金がそんなにありませんでした。
「このお人形だったらいいよ」
一八番目の人形、私が選ばれました。子供は、私を見て言いました。
「こんなのにんぎょーじゃない。」私は人形です。それでもお母さんは、この人形しか買えないからといって、一八番目の人形を買いました。私を買いました。
子供は私に言い続けました。「こんなのにんぎょーじゃないよ。こっちのウデがちっちゃい、こっちのアシがながい。あたまがでかくてオバケみたい。なんで、なんで、」子供は私に一言、こう言った。
「“ふつう”じゃないの?」私は普通ではなかった。
どんなに機能的にも頑張ろうとしても、他の人形達みたいに、クリーンな音声を出せません。
「こんなのにんぎょーじゃない」私は人形です。
「おまえなんかにんぎょーじゃない」私は人形だよね?
成長した後も、その子供からは言われ続けた。
「お前を人形だとは認められない。」私は人形じゃなかった?
「お前を持っていたくはない。皆は普通の人形を持っている。なのにお前だけ人形じゃない。要らない。」私は人形じゃなかったんだ。
私、一八番目の人形は作り上げられた時には、既にこの形だった。この音質だった。製作者は言った──
「これ以上は改善できない。元々の素材がこのようなものだった。これ以上はどうしようもない。」
けれども、この世界は普通じゃないと生きていけない。普通じゃないと選ばれない。普通じゃないと受け入れてもらえない。皆と同じじゃないと生きていけない。皆と同じじゃないと選ばれない。皆と同じじゃないと受け入れてもらえない。
何故なら、欠陥品だから。出来損ないだから。不格好だから。……綺麗じゃない。人形は、人間を楽しませるものである。楽しませられないのであれば、それは人形ではない。ただの失敗作だ。私は失敗作の一八番目の人形。
何がダメでしたか、作られてきた時点でダメでしたか、存在してはいけなかったでしょうか。
「存在してはいけなかったんだよ。」誰かが言った。
「辛いし、悲しいと思うけど、それがこの世界のルール。周りに合わせられなければ、周りと同じでなければ生きていけない、それが当たり前。受け入れられようと思うな、それが現実なんだ。」その人は淡々と言っていたが、表情は笑っていた。私を抱き上げて笑った。
「分かりましたか? 理解ができましたか?」アナタは誰ですか?
「私が誰かなんていうのは必要がない。強いて言うなら、アナタに聞かせなければいけない存在だった。……それは自分のためにも。」
その人は変わらず、笑顔を浮かべていた。温かくもなければ、冷たくもなかった。