夜行性人間
読書をした。
ただそれだけだ。
でも、それは私の心を存分に羽ばたかせてくれる。
最近はめっぽう忙しく、ずっとPCと睨めっこをしている。
どういうわけか、会社を辞めたのに、ずっと忙しいのだ。
いや、理由はわかっている。そう、いま流行りのフリーランスとやらになったのだ。
会社を辞めた理由も明白で、「ただ辞めたくなったから」。
こういうと「考えが甘い」とか「根性なし」とか色々言われそうだが、まあ、仕方がない。これが事実なのだ。
夜行性という動物たちがいる。
コウモリとかフクロウとかがそれに当たる。
最近気づいたことがある。「私も夜行性だ」ということだ。
それは俗にいう夜型人間とか、朝方人間とかに分類されない「夜行性人間」なのだ。
朝は毎日決まって7時50分にアラームをセットしている。8時から仕事をスタートするためだ。でも、自宅でただPCと睨めっこするだけの仕事なので、特段何か身だしなみを整える必要はない。ただ歯を磨いて、顔を洗って、白湯を飲む。そのための10分間だ。
その後は普通に淡々と仕事をこなし、ときどき散歩に出掛けては本屋に立ち寄り、長居しすぎたなと後悔しては、大急ぎで帰宅してまたPCに向かう。そうこうしているうちに時刻は簡単に0時を回っている。
ベッドに入るのはそこからさらに3時間後と私の相場は決まっている。
つまり、私の睡眠時間は平均するとおおよそ4時間ちょっとといったところ。うん、それ自体は特段問題でもないし、これだけではただの「夜型人間」になってしまう。私が「夜行性人間」と言いたいのは、スイッチの問題だ。
人間という生き物はどうにも単調に作られているようで、オンとオフの二つのスイッチしか持っていない。遊ぶにしろ、勉強するにしろ、お風呂に入るにしろ、何をするにもスイッチがオンにならなければ行動はできない。オフの間はただただスマホかベッドと友達になる以外に方法はないのだ。
ちなみに私のスイッチがオンになるのは決まって午後1時。いや、厳密にはちょっと違う。オンになろうとスイッチが少しずつ動き始めるのがこの時間なのだ。カチッと音を立ててオンになるのは大体午後6時頃。つまり、社会が定時ですといって遊びにスイッチを切り替え始める頃だ。この時間になってやっと私は気合を入れて仕事ができるようになる。
この社会は朝から働くようにできているし、私自身も朝早く起きること自体に何も不都合は被っていないので、朝から仕事はしている。ただ、朝早くから人と関わるとか、とても大事なことをしようとすると、妙に体がこわばってしまい、どうにもうまく動けなくなってしまう。
だから、私は自分は「夜行性人間」と呼び、夜と友達となることを認めた。
フリーランスという働き方は、とても難しい。全ては自分にかかっている。国民年金も税金も全て自分一人で払わなくちゃいけない。とんでもなく大変だ。
それでも「夜行性人間」の私にとってはとても心地が良い。お金もないし、なぜだか時間もない。会社員の時よりも忙しく働いている。でも、それで良い。
そんなことを考えながら、深夜に読書をするというのは、存外楽しいものだ。
ふと小窓に目を向けると、東の空が薄ら明るくなっていた。
そろそろ布団に篭る時間が来たらしい。
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