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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」6.蜘蛛

 壁に何かの影を感じる。右から左へ、下から上へと何かが動き回っているような。ふと顔を上げると、そこにいるのは蜘蛛。ということがよくある。

 私の部屋にはどこからともなく遊びに来る蜘蛛がいる。それもなかなかに頻度が高い。近くの公園には奇妙な虫たちが住んでいるという噂もあるので、滅多に窓を開けることもない。玄関を開けたってそこは共有スペースの室内階段に繋がっているだけだ。それなのに、彼らはひょこっとしょっちゅう顔を見せる。

 とはいえ小さな蜘蛛なので、捕まえるのも簡単。やっつけてしまうには可哀想で、こんなところにいてもつまらないよと割り箸に乗せて窓を開け、外へ連れて行く。ちょろちょろと割り箸をくだって、見事外の世界へ帰還。よかった、よかったと安堵したのも束の間、びっくり仰天、次の日には帰ってきてしまう。そんなに我が家の居心地がいいのだろうか。もしそうなら何も必ず外に連れ出す必要もない。悪さをしているわけじゃないのだから。

 窓辺にあるキーボードでクラシック音楽を演奏すると、決まって目の前の壁にやって来る。彼らはクラシック音楽が好きらしい。何て洒落た趣味をお持ちなんでしょう。これなら私と仲良くなれそうだ。


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