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ハンディを持つ息子がコロナに罹り、要介護の義母を抱えているのに私も陽性者となってしまった日の話。

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9月7日(水) 朝から掃除、おかずの作り置きなど、「いつ誰がどうなっても良いように」という覚悟のもと、家事を黙々とこなす。

息子は夜中に少し熱が上がったものの、日中までには平熱に戻り、顔色も良くなって来たように思う。

昼食後、何となく体がダルい。
あまり眠れていないからかな、と少し横になる。

夕方。さて夕飯作らなきゃと起きようとすると…
何となく体が熱っぽい。
喉も痛痒い感じがする。
検温。37.5℃。
これは…
あらかじめ県から取り寄せておいた抗原検査キットを使う。

陽性。

昨日は間違いなく陰性だったのに。たった1日で???

自身のことよりもまずやらなきゃないことがある。
義母についての様々な調整だ。

まず透析クリニックへ連絡をする。
「なんで息子さんが陽性になった時点でホテル療養を希望しなかったの??
受診した時に家に透析患者がいるってちゃんと話してあります???」
開口一番責め立てられた。

そんな…

まずは目の前の息子のことで頭がいっぱいだったし、我が県ではそもそも現在ホテル療養は重症化リスクのある高齢者が主な対象者となっているはずだし。

ドライブスルー検査は「はい、陽性ね!お大事にね!自宅療養ね!」で終了だったし。
家族のことまで話せる時間なんてなかったし。

一応息子には話しましたよ。
希望すればホテル療養ってのがあるんだよってって。
「嫌だな。俺はうちにいたい」
そりゃそうでしょう。
1人で何もかも対応するのはちょっと難しいし、ただでさえ陽性と言われてナーバスになっている息子を、手放してホテルに託すことなんて出来ないと思った。

その選択、私は間違ってないと思っている。
月曜日に連絡をした段階では、クリニックからはホテル療養の話なんて一切出なかったし。

後からは何とでも言えるよね。
いっつもそうだ、ここのクリニックは。
最悪パターンになったら、全てを家族のせいにする。
今回のだって、完全に後出しジャンケンじゃん。
息子の知的障がいのことだって、何回も話してるし。

この期に及んでも、義母の透析は家族で送迎しろと言う。
「これ、もしも他の家族が全員陽性になったらどうしたらいいんでしょうか…」
半泣きになりながら聞くと、
「そんなの、ご家庭で考えてください!こちらは関与出来ません!」と言われた。
「すでに濃厚接触の疑いがある義母さんを、こちらで入院させるのはもう不可能ですからね!」とも釘を刺された。
だから息子の判定が出る前から相談してたんじゃないか…。

後から聞いた話によると、たとえ家族や本人が予防(隔離)のために入院を望んだとしても、今回のように主治医が「何としてでも透析に通ってこい」という方針であれば、入院はもとより他院を頼ることも出来ないということらしい。

どうしたらいいのか分からないから聞いてるのに、こんな風にぶった切られたら、もうなす術はない。

自分の登録(医療機関は受診せず、キットで陽性となったら「陽性者登録」をして指示を待つことを選択)もままならないまま、すがるように陽性者サポートセンターに電話をかける。
自身の体調や不安の相談ではなく、まずは家族の相談のために。

クリニックでのキツい対応の後ということもあって、メンタルはすでにズタズタ。再び泣きながら現状を訴える。
「少しお時間くださいね。詳しいものに相談してから折り返しますから」
物腰の柔らかい担当の方の声。それだけでも救われる思いがした。

その間にケアマネさん、自分の陽性者登録、家族への周知(LINE)、保険屋さんへの連絡など。
気付くと熱はすっかり下がっていた。
発熱も、検査キットの判定も、実は嘘だったんじゃないの??
そんな風に思えるくらいに、体はテキパキと動いていた。

折り返しの連絡が来た。
「管轄の保健所に、透析を受けている家族を抱えて陽性となり、困っている旨を伝えてください。こちらよりも的確な情報をお持ちだと思います」
頭ごなしに否定されたクリニックとは雲泥の差である。
「お忙しい中、時間を割いていただきまして、本当にありがとうございました!」
見えない相手に何度も頭を下げながら(ついついやってしまう💦)電話を切った。

保健所へ電話をかける。
留守番電話に切り替わり「業務時間外です」そりゃそうだ。
でもメッセージを聞き進めていくと「緊急の場合はこちらまで…」と、セキュリティ管理会社の番号が流れた。

ただでさえ忙しい保健所の方々は、きっと膨大な仕事を抱えていらっしゃることだろう。
でも、我が家にとってはある意味緊急事態。
申し訳ないと思いつつ、こちらへ電話をかけて事情を話し、担当の方から折り返していただけることになった。

程なくして電話をいただく。
こちらもとても丁寧な対応をなさる方だった。
「本人が濃厚接触者であるという前提で、なにが救済策はないのかを調べてみますので、少しお時間をいただきます。お困りですよね。ご心配ですよね。少し待っていてくださいね」
そうやって寄り添ってくださる姿勢だけで、少し希望が湧いてくる。

結果は。ぶっちゃけ、本人が陽性であれば県事業により透析クリニックへの送迎なり、専門の病院への緊急入院なりの策が使えるそうなのだが、家族に陽性者が出たというだけでは使えないのだということ。
今いる家族の中でやりくりをするしかないのだ、と。
「本当にお困りのところ、お力になれずに大変申し訳ありません」
いえいえ、あなたの誠意はしっかり伝わりました。
「時間外にも関わらず、丁寧に教えて下さり本当にありがとうございました!」
今回も何度も何度も頭を下げた。
もう絶対に、市内にある保健所に足を向けて眠るもんかと心に誓った。
「ご家族全員が陽性になってしまったり、また何か困ったことがありましたら、いつでもこちらへお電話してくださいね」
最後まで本当に優しい方だった。

つまりは。
これ以上家族から陽性者を出すな。
義母を守れ、ということなのだ。

思いつく限りの相談先へ電話をかけまくる。
一旦は義母の送迎を請け負ってくれると約束してくれた事業所からは「協議した結果やっぱり無理」「自分のところの従業員の安全が最優先」(それはごもっとも)と連絡が入って約束は白紙となり、信用して色々相談していた方からは「(家庭内感染は)やっぱり気の緩みがあったんじゃないの?」と言われたり、やっぱり二言目にはみんな「義母の安全」を口にする。

息子の発熱が分かった時点で家族バラバラの部屋を確保し、お互い顔を合わせない工夫をしながら過ごしていたし、グループLINEで「今から廊下に出る」「トイレ使います」などと随時動きを共有していたし、食事ももちろんかなり前から別々にしていたし。

陽性確定となった後は、私以外息子のところに出入りしないようにしていたし。
(食事を持っていくためだけの入室)
確かに防護服みたいなものの用意はなかったけれど、ウイルスブロックスプレーとか、出来うる限りの対策をして出入りしていたのに。
これを「気の緩み」と言われたら、一体私はどうすれば良かったのだろうか。

そういや陽性になったと別室にいる夫に電話をかけた時、見通しがつかない段階で報告したからか、若干イラつかれた。
「どうしたらいいのか調べてから電話しろ!」と。

一番罹ってはいけないあんたが罹るからこんなことになるんだよ。
そう言われているような感覚に襲われ、涙が止まらなくなった。

公的機関も関係機関も助けてくれない 、辛い体を休めることも許されない状況に、本気で頭がおかしくなりそうだった。

夫は自身が発症しなければ、待機期間が終わる来週早々には勤務に戻らなければならないと言う。
今週いっぱいの送迎は夫に頼めるけど、私の療養期間が終わるまでの送迎は一体どうしたらいいんだろう…。

1日50000円ほどかかるという民間救急車輌をチャーターするしか道はない、と腹をくくった時、娘から電話が入る。

「お母さん、ばあちゃんの送迎、わたしがやるよ」
そのために私の療養期間が終わるまでの間、在宅勤務が出来るように勤務先に掛け合ってくれたのだと言う。

家で仕事をしながら、時間になったら義母を車に移動させ、重い車椅子(自動ブレーキが付いているため、結構な重さがある。下手したら腰を痛める)を車に積み込み、クリニックのスタッフと連絡を取り合い、指定された乗降所まで送って行く。
終わったら迎えに行き、家に着いてからも何かしらの身辺の世話がある。
他の家族の食事の準備だって…。

「あなたにそんなことさせられないよ」
家事を頼むのだけでも申し訳ないと思っているのに、自分のことを覚えてくれていないような祖母のケアも託すことなんて…。

「送迎に1日50000円も使うくらいなら、別なことに使おう。だったら私がやるよ。これが全部終わったら、パーッと気晴らしに行こう!!」

さっきまでの絶望の涙とはまた違う涙が溢れた。
「ま、私が陰性キープ出来ていたらの話だけどね。
ここまで来たらやるしかないじゃん!」
いつから貴女はこんなに大人になったんだろう。
困っている人間にさりげなく手を差し伸べられる人になったんだろう…

ごめんね、なんて謝らないで!
そう言われたので、母は甘えることにしたよ。
ありがとう。
本当にありがとう。
母がシャバに戻れる日まで、どうかよろしくお願いします!

そして天国のお父さん。
どうかどうか、孫娘をお守りください…。

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