10代は忙しいのでね──2024年9月7日

新宿で『14歳の栞』を観る。埼玉県に実在する某中学校に通う2年6組35人の生徒に密着したドキュメンタリー映画。
その日の最初の回を観たのだけど、観終わった後すぐに次の回のチケットも買ってしまった。同じ映画を1日に連続で2回観るなんて初めてだ。それぐらい良すぎた。
この作品にはセンセーショナルな事件も、手に汗握るような展開も起こらない。修了式までの彼らの何でもない学校生活が淡々と描かれる。
だが、子どもと大人の狭間で揺れ動く多感な彼ら彼女らにとっては、そんな何でもない日々すべてが十分にドラマティックなのだ。
試験の点数や球技大会の結果に一喜一憂したり、バレンタインデーにいかなる方法で意中の男の子にチョコを渡そうかと画策したり、ホワイトデーのお返しはリップクリームがいいかななどと友達と相談しながらイオンの中を散策したり。世界史の授業で居眠りする子もいれば、窓の外に広がる河原の桜並木を見つめる子もいる。
自由奔放なサッカー部、試合に人生を賭けるバスケ部、すでに絵がプロ級に上手い美術部、人の内臓を見たいから(!)医者を目指す帰宅部、あるきっかけで教室に入れなくなった科学部、それに責任を覚える野球部……。
ひとりひとりがクラスメイトには決して見せない悩みや迷いを持っていて、それに折り合いをつけて泰然としている子もいれば、何も答えが出せず戸惑いながら歩く子もいる。でもみんな自分なりに必死に考えながら行動している。大人が考える以上にみんなすでに大人なのだ。自分が中学生だったときは、果たして彼らのように深く物事を捉えられていただろうか。
とにかく35人全員がどうしようもなく愛おしくて、彼らの屈託のない笑顔やふざけた会話、真剣なまなざしすべてに涙腺が刺激されてしまう。シーンごとに感想を述べていったら本一冊書けてしまうぐらい、感情が洪水のように溢れ出た。
ふと実家にある中学のアルバムを開きたくなった。あの頃のクラスメイトたちは、いったいどんなことを考え、どんなことに悩んでいたのだろう。
幼馴染のN君、一緒にオタク談義に華を咲かせたT君やM君、俺をいじめた野球部のN君、下駄箱の前で急に「君ってなんかキモいよね」と言ってきたHさん、告白されて交際したけど一ヶ月ぐらいで急に別れのメールを送ってきてすぐ野球部のイケメンと付き合い始めたEさん。何か苦しい思い出ばかりで別の意味で泣きそうだけど、いま思い返せばすべていい思い出だ。もし機会があれば、タイムスリップして当時の彼らと膝を交えて語り合いたい。
風化して灰色がかっていた中学時代の記憶にパッと明るい色彩をつけてくれる、そんな作品でした。名作。

その後、新宿の紀伊國屋書店でホラー小説の新刊を買う。『口に関するアンケート』ちいちぇ〜。このサイズでも製本できるんだね。当たり前か。でも逆にコストかかってそう。