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あなたはどう観る?D地区『おかえり未来の子』


サッカー観戦の話

D地区の髙谷さんとサッカーを観に行ったら、道中ふらっと煙草を吸いに立ち止まり、ハーフタイムには場外まで出て自販機でアイスを食べ、試合中は隣の席のおじいさんとコミュニケーションを取りながら手を叩いていた。 僕はああいう時、事前に決めたルートでぼーっと過ごしがちなので、彼との「旅」が新鮮だった。

自分の過ごし方も嫌いじゃないよ。ただ、他人と時間を共にすると新しい発見があるよねという話。だから、誘いあって出かけるのが好きなんだよなー。単に寂しいのではなく。

Xに書いた感想(加筆修正あり)

さて、そんな髙谷誉さんが脚本を担当(演出は共同)、扇町ミュージアムキューブで2024/10/19(土) ~ 10/20(日)に上演した『おかえり未来の子』についての感想を書く。

ほとんどXでつぶやいたことの焼き直しだが、東京公演もあるとのことなので、そっちの方々に届けと思ってネタバレなしで書きます。

まず、宗教二世という題材を扱ってるのでそういう目で見てしまうかもしれないが、根底の部分では僕にも当てはまる普遍的な物語だった。あるいは、僕がこの作品を称賛していることに驚いた人もいるかと思う。ストライクゾーン内とは言いづらいのに率直におもしろいと思えたのは、それだけ芝居としてのクオリティが高かった証左だろう。キャスティングも最高でした。

途中、黙って会場を抜けている人がいたけれど、もしかしたらしんどくなったのかもしれない。それくらい人によっては抉られる作品だったと思う。僕もいたたまれないなーと感じる箇所もあったが、基本は客観視して楽しむタイプなので問題なかった。共感を重視するような見方をするならしんどかったかな?

あ、つい想像で書きましたが、もし違ったらすみません。でも、そうした想像がふくらむほどのいたたまれなさがありました。

最後に個人的な話に帰結して申し訳ないが、『ザ・パレスサイド』の打ち上げで、この芝居のキャスティングの一端を担った髙谷さんに(もちろんお世辞半分だろうけど)「いい俳優だと思う」と評してもらえたことを誇りに思うレベルには俳優陣の演技がよかった。そしてそれは、演出家がしっかり演出をつけられていた結果だ。予定していた稽古場見学を断念したことが悔やまれる。

久しぶりにこんなに感想を書いたなぁ。おもしろかった!

「おもしろかった」と表現するのが安直に感じるまであるな。「良い観劇体験でした」が僕の感覚に近い。

最近マジで身体がバグっててコンディションが悪いと観劇中でもすぐ寝てしまうのだけど、あの日はベリベリバッドコンディションの中ものめり込んで観た。良い観劇体験に身体が喜んでいた。

Xに書かなかった感想

最後に、本当に最後に、せっかくだからXにも書かなかったことを書く。

これはべつにいい意味でも悪い意味でもない(はず)のだけど、登場人物の名前が残らなかった。かろうじて、妙子。……が、改めて投稿された感想を漁ってみると、「勝利が~前田が~」等とけっこう出てきて意外だった。髙谷さんがブログで書かれていた「『枯木灘』『地の果て至上の時』の秋幸と『鳳仙花』のフサから、不能な勝利と、反逆する妙子、というイメージが湧いてきた」といった解説も(僕も中上健次が好きだし)納得できるのだけれど、実感としては薄かった。決して人物造形に難があったわけではなく、むしろそこは突出していたのだが。どうしてかしら?

おそらく、僕はいつもに増して「引き」でこの芝居を観ていたのだと思う。事前情報からも、始まってすぐの空気からも、「のめり込んではいけない」と察知していた。再び髙谷さんの言葉を借りるなら、劇場で行われていた「リアクションをめぐるゲーム」(詳細は彼のブログ参照)に参加することを避けた。最終的には物語に「のめり込んで」観たのだけど、やはり登場人物ひとりひとりからは「引き」の姿勢を貫いたのだと思う。それが名前を覚えられなかった要因のひとつではないか。

このタイミングでチャップリンなんかを引用してアレだが、「人生はクローズアップで見れば悲劇だがロングショットで見れば喜劇だ」がしっくりくる。僕にとって、『おかえり未来の子』は喜劇だった。

11/2(土)~11/4(月・祝)の3日間、王子小劇場にて上演しますので、ぜひともご覧になってください。

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