エイチエムピー・シアターカンパニー『語りの演劇』稽古場日誌
はじめに
改めまして。このたび10月31日(木)~11月5日(火)に心斎橋の劇場、ウイングフィールドにて上演される『アラビアの夜&メイド・イン・ジャパン』に参加しております、伊藤芳樹と申します。
僕はエイチエムピー・シアターカンパニーさんの稽古場で、「稽古見学ログ」をつけています。
これは、所属している劇団プロトテアトルの演出部というセクションへ主にお任せしている「稽古場ログ」の延長線上であって、せっかくなので今回は僕なりにアレンジして記録を続けようと考えました。
……と、前回とまったく同じ出だしではじめましたが、この先は前述のログを使って、今日までの日誌を書いていけたらと思います。
よろしければ、お付き合いください。
笠井友仁の演出風景
まずは演出家・笠井友仁さんの演出ですが、想像していた以上にミザンス中心で、演技については俳優が見つけてきたものをおもしろがっていくスタンスだなぁと感じています。
もちろん、その「見つけてきたもの」に対しては、「これは良い。こうした効果があって……」と都度説明を入れてくださいます。
また、時おり質問を投げかけ、なにか選択する場面になるとたびたび「馬鹿馬鹿しいほうがいいよ」とおっしゃるのも印象的です。
あまりメモなどを取らないのが意外といえば意外でしたが、緻密に計算されており、こういう演出家と共に作品をつくる俳優はなにをできるのだろうと日々考えながら稽古を拝見しています。
くわえて思うのは、目標設定やロードマップが丁寧だということ。毎回、終わり際には「この先こうしよう」といった話があります。これは座組にとって健全で、非常にやりやすいのではないでしょうか。
稽古場日誌
さて、日にちごとにログを切り抜いて簡単に振りかえっていきます。
かなり雑多にたくさん書いているので、一部分の切り抜きになりますが、ご了承ください。
9/20(金)アラビアの夜
この日は合流初日なので、僕の理解度が浅く、頓珍漢なことを書いていますね。
「独白のみで構成される会話しない?劇」というのはややニュアンスが違いますし、笠井さんの演出に対しての「演技についてはわりと放任?」もちょっと誤解される書き方な気がします。
まあ、当初はこのような日誌やコラムを担当する予定はなく、僕しか読まないつもりでつけていたので仕方ないのですけれど……。
9/21(土)アラビアの夜
21日で印象深いのは、エレベーターに関する言及かな?
『アラビアの夜』はパッと見、深層心理の表れとして受けとれると思います。
フロイト的な解釈をするなら、夢の中で上がったり下がったりするのは性的な意味合いになりますよね。
僕はあえて先日のコラムでそうした解釈を盛りこみませんでしたが、やはりすぐに思い浮かんだのはそれでした。
9/23(土)アラビアの夜
23日はローマイアーとカリルの台詞を入れるタイミングがあったので、てんやわんやしました。
でも、終わってみれば、力になれることが増えてよかったなと思います。
フランツィスカの「神の視点」の話が出たのもこの日ですね。新しい発見の多い、刺激的な一日でした。
9/25(水)アラビアの夜
25日は、台本のおもしろさにひたすら感激していたように思います。ログにもそういった記載がありますね。
また、フランツィスカに神の視点を与えるなら、カルパチの立ち位置が難しくなってくるのでは……と感じたのもこの辺りからでした。
途中のローマイアーの台詞にも胸を打たれましたね。高橋さんの読み方が、またとても素敵で。
今回の演出ではこの三人のバランスが肝とも言えると思うので、慎重に見守っていきたいなと思った次第です。
9/30(月)アラビアの夜
30日のトピックといったら、LINEグループに誘っていただいたことでしょうか(笑)。
月並みな感想になりますが、うれしかったですね。どこまでいっても見学の身だとは思っていたので。
あとはこの日から髙安さんが稽古に再合流。僕とは『ザ・パレスサイド』以来に顔を合わせたので、それもうれしかったです。
10/9(水)メイド・イン・ジャパン&アラビアの夜
10月9日は『メイド・イン・ジャパン』を初めて拝見。台本のクオリティが高いのはもちろんのこと、岸本さんの歌うような演技に目を奪われました。
髙安さんの(大勢の登場人物の)演じ分けも見事で、『アラビアの夜』とはまた違った、熟練の技を見せつけられた感じですね。
そして何より、この日たいへんだったのはファティマ役で入ったことです。もう、めちゃくちゃ苦戦しまして、あれを軽くこなす安部さんのすごさを実感しました。
10/13(日)アラビアの夜
これは懺悔なのですが、13日はそのすこし前に体調を崩していたこともありコンディションが最悪で、朦朧とした意識の中での参加になってしまいました……。
ほんとうに申し訳なかったです。それなのに、皆さんなにも言わずにいてくださって、ありがたいやら余計に申し訳ないやら。猛省でした。
10/20(日)メイド・イン・ジャパン&アラビアの夜
20日は『メイド・イン・ジャパン』の稽古をまじまじと観て、その素晴らしさを再確認しました。
『アラビアの夜』の通しでは音響が加わっていて、それも素晴らしかった。
その効果によって、僕が勝手に懸念していた点などが解消されていて、安心もしました。
もうひとつ、最近の笠井さんはけっこう頻繁にメモを取っているなーと思います。終盤に差しかかったからかもしれません。こういう変化も見ていておもしろく、勉強になるところです。
おわりに
いかがだったでしょうか。稽古場の充実した様子が、すこしでも伝わっていたらうれしいです。
ぜひ、本番もお誘いあわせのうえ、お越しください!
(了)
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