ゆるく、ときどき妄想のちエンタメ
『いのちの車窓から』 星野源
読了レビューです。
文字数:約1,200文字
ネタバレ:一部あり
星野源という人物について、「よくわからない人」だと思っている。
ミュージシャンであり俳優、ラジオにも出演して本書のようなエッセイも書く。
似たようにマルチな活動をする人は多いし、加藤シゲアキのようにアイドル、かつ作家という振れ幅のすごい人もいる。
星野源という人物についての謎を解くヒントになればと思い、たまたま書棚に見つけた本書を手に取った。
雑誌『ダ・ヴィンチ』の連載が元になっているためか、ざっくり2,500字くらいの分量で1つのテーマがまとめられ、とても読みやすい。
〇〇は××だから△△であり、だから私は~といった、主張が強めで硬めな印象はなく、さらりと流れていく店内BGMのようだ。
仕事にまつわる話も多いけれど、自らについて冷静に俯瞰しているのが競艇場を訪ねてみた話、『多摩川サンセット』から分かる。
カードの表裏と同じではないにせよ、エンタメにまつわる仕事はギャンブルと近しく、コロナ禍で様々なコンサートやライブが休演になった。
そんな中で発表した「うちで踊ろう」は、多くの人に元気を与えてくれた。
ただ、当時の故・安倍首相までも関連動画を投稿するとは、いったいだれが予想できただろうか。
本書に収録されているのは、くも膜下出血から快復した後に書かれたもので、療養中に正体を隠してTwitterを始めてみるあたり、いたって普通の人間であると認識する。
ゲームが好きで12時間プレイした話に驚き、ホテルの一室から見たとする光景が実は妄想だったりと、思わず「なんじゃそりゃ!」と叫んでしまった。
高校を長期で休んだり、自分の好きなラジオ番組について話せなかった過去など、ほどよく暗い話の後に来るのはドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で共演し、その後に本当のパートナーとなった新垣結衣の話だ。
さらに後の話は雑誌に掲載されたのみらしく、次に刊行されるであろう書籍に収められると期待する。
思いがけず手に取った本書から、星野源という人物について好意的な姿勢を持つようになった。
冗談ではなく死にかけた人間は人生観が変わるというけれど、これから1人のサバイバーが何をしていくのか、ゆるく眺めていきたくなった。
(敬称略)
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