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夏夜のUTAGE 道でうたたね 

【文字数:約600文字】

 先日、TOKYO東部の浅草橋で飲んだ。

 碁盤目のような町に雑居ビルが立ち並び、その1階に点在する飲み屋が道を照らし、どことなく桜木町にある野毛を連想する。

 暑い日が続いていることもあり、時間に余裕をもって町をうろついた。

 日に焼かれた町は夕暮れでも熱を持ち、都心に生きる人々を路上に誘う。

 東京湾から吹く風は生温く、けれども人工的でないためか心をほぐす。

 ビアホールのように洒落てはいないけれど、立ち飲みと小さなテーブル席のある店に入り、2時間ほど飲んだ。

 席と席が近く酔いの気安さも重なって、見ず知らずの人たちと中身のない話をした。

 その後、コンビニで買った缶酒を近くの公園で開けて延長戦。

 モバイルバッテリーで使える殺虫器を囲みながら、わりと、けっこう、かなりどうでもいい話をする。

 飲んでいるのが安酒だろうと関係なく、楽しいUTAGEだった。

 終電を待つ駅まで友人を見送り、ぶらぶらと私は町をさまよいながら帰宅する。

 夕暮れよりも涼しくなった町には、道端で眠る酔っ払いが増えてくる。

 コロナが収束したわけではないけれど、そうしたものに平和を感じるのは不謹慎だろうか。

 ある人は放置して、またある人は巡回中の警察官に頼み、最後には自分で声をかけた名も知らぬ酔っ払いたち。

 財布やスマホを盗まれたりするかもしれないのに、警戒心を店にでも置き忘れた酔っ払いたち。

 酔い流しの水を飲みながら、せめて彼らが風邪をひかないようにと願った。



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