SI おれたちはいつでも 2人で1つだった
『ピンクとグレー』 加藤シゲアキ
読了レビューです。
文字数:約1,000文字 ネタバレ:あり
※ タイトルは修二と彰「青春アミーゴ」の歌詞より引用
※ ヘッダー画像左が単行本、右が文庫版
・あらすじ
河田大貴と鈴木真吾は小学生のときからの親友だった。
けれども2人は、やがて「河鳥大」、「白木蓮吾」となり、違う道を歩き始める。
その道がふたたび交わるとき、2人は1つになる──。
・レビュー
作者はNEWSの加藤シゲアキさんで、刊行当時は現役アイドルが執筆したという話題性もあって、映画やマンガにもなった。
すこし前にインタビューを読み、そういえばと思い出して初期作を手に取ってみた。
内容としては芸能界の闇というのは変だけど、特異な世界によって鈴木真吾が白木蓮吾へと作り変えられていくような恐ろしさがありつつ、主人公は彼の友人である河田大貴なのが重要だ。
人気を得て売れていく白木蓮吾と、ぱっとしない河鳥大という2人の役者は、大学に通うためにルームシェアをするほどの仲だった。
しかし、あるドラマ撮影をきっかけにして2人の道は別れてしまい、高校の同窓会まで交わることがない。
スポットライトが1つしかないなら、その中に立てる役者は1人しかいないけれど、2人の距離が近づけばそれも可能になる。
書き方が現在と過去を行ったり来たりするため、始めのうち観客は舞台に立つ役者が何者か、やや分かりにくいかもしれない。
でもそれは役者という「作られた存在」を表しているように感じられ、2人の少年が役者そのものとなったとき、観客には2人が1つに見えるだろう。
終幕にて、河鳥大と白木蓮吾の物語が呪いであるかのように縛られるのは、不思議と優しさを感じた。
残念ながら近年、芸能人の訃報を見聞きすることが増えた。
本作を読むことで当時の記憶が思い出され、気分の悪くなる人がいるだろうし、刊行当時よりも環境は苛烈になっているとさえ思う。
観客であるところの私たちは、ついつい彼らを娯楽のために消費して、そのうちに忘れてしまう。
その点については本作にも書かれており、10年前の作品であっても変わらないのは、もしかしたら人間の抱える業なのかもしれない。
だから折に触れて彼らがいた事実を思い出し、本作のような物語とすることで彼らは蘇り、そして人々の記憶の中で永遠に生き続けるだろう。
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