心中はフクザツな信州ツーリング 3/3
【文字数:約2,200文字】
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以前から訪れてみたかった無言館を鑑賞したりんどん。
おおよそ想定していた通りのツーリングを楽しめていたのだが……?
今回のツーリング記録1/3では、諏訪湖の近くにある北澤美術館を訪れた。
このすぐ近くには「タケヤみそ」の工場があり、売店の入口にはサムネイルの「菌塚」がある。
畜産の解体場などでは供養塔があると聞くし、人間は利用させてもらっている、という意識を持つべく拝んでおいた。
売店では当然みそが売られており、イートインのスペースでは事前に評判と聞いていた味噌ラーメンを頂く。
数々のラーメンを食べ歩いてきたわけでもないけれど、スープがどろりとしているように見えて、舌の上にしつこい感じが残らない一品だ。可能なら飲み放題にして欲しい。
今回のツーリングには目的の1つとして、長野県は中野市、江部を訪ねるというものがあった。
その場所は創作大賞2024に投稿したエッセイと関連がある。
記事の後半にて、2023年5月25日に長野県中野市で発生した事件について言及している。
調べてみると事件が発生したのは同県中野市の江部であり、被害者と加害者のいた場所の空気が知りたいと思っていた。
ただ、現地に着いても事件の痕跡らしきものはなく、供養のために建立されたとされる菩薩像も見つけられなかった。まさか住民に事件のことを訊ねるわけにもいかない。
長野県の県庁所在地である長野市と隣接しているものの、広がる田んぼに一軒家が多くを占める、典型的な地方の風景だった。
この場所で事件の加害者 青木 政憲 被告は育ち、ナイフと猟銃を使って犯行に及ぶ。
彼が「『ぼっち』とばかにされていると思っていた」と考えるに至った心理が、私にも多少なり分かるような。
父母ともに出身は地方であり、とりわけ市街地から離れた郊外だ。近所の人と顔なじみという安心感は、お互いの動向が見えてしまうのと裏返しで、多少なりとも息苦しさを伴う。
空間としては広いのに息苦しさを感じるのは、「自分が劣っている」という劣等感を有形無形のアレコレによって、どうしても意識せざるを得ないからだと思う。
それでも苦手だったり嫌いな人と顔を突き合わせ、さも仲良しであるかのように装わねばならない。それは人間関係の基本なのかもしれないが。
反対に都心部における希薄な人間関係は楽だけど、それが孤独を感じさせもするのだから、なんとも皮肉な話ではある。
事件の起きた場所を訪れ、これといって得られたものがあったとは言えないが、行ってみて良かったとは思っている。
フクザツな心中を抱えながら、諏訪湖へのアクセスが良いキャンプ場を利用し、思いがけず天体観測をすることができた。
標高もあって朝晩だと初冬の気温であり、当然タイヤも冷えている。それ以外にも複数の要因が重なり、いざ神奈川へと帰る坂道でそれは起こる。
タイヤがスリップしてガードレールに衝突し、その勢いで転倒した。
結果としてウィンカーの外れたブラブラ状態になり、そのままでは帰れそうにない。
ただ、不幸中の幸いというべきか、町へ入ってすぐにショッピングモールがあるのを知っていた。
そこで補強用の金具とビニルテープを購入し、ひとまずの応急措置として固定することができた。ハンドルのレバーが折れた際にも、同じような対処ができると知っていたのが活きた形だ。
方向指示器が付いていない、あるいは正常に機能していない場合、整備不良として処罰の対象となる。
いちいち道行く車やバイクを止めたりはしないが、明らかに異常だと分かれば「運転手さん、ちょっと端で止まってください」と呼びかけられるのが目に見えている。
車体はどうにかなり、次は車体の下敷きになった足や腰が気になり出すと、途端に痛みを感じ始める。
個室で調べてみると血が出ており、これまた大判の絆創膏で処置をして事なきを得る。ヘルメットがあったとはいえ、首や頭の痛みがあるのは仕方がない。
パトカーに怯えながらも出発して無事に帰宅し、今現在は交換用のウィンカーを注文しているところだ。
転倒に到った大きな理由として考えられるのは、たぶん路面が濡れ気味だったことだろう。
晴れ続きでも山は朝晩の気温差で水分が出るため、場所によっては濡れた路面になっている。それが坂道であれば滑りやすく、タイヤの冷えた発進直後はスリップの危険性も高まる。
結果として曲がり切れずガードレールに衝突、転倒したというわけだ。
ショッピングモールが近くにあったのは幸運だったけれど、荷物が多かったのがスリップした要因の1つであり、反対にダメージを減らしてもくれた。
また、雨などでガードレールの下に土が溜まっていたのも、直撃のダメージを和らげてくれたように感じる。たぶん直撃だったら勢いのままで、道路外に投げ出されていたかもしれない。
タイヤのスリップ自体は変な話よくあることなので、最終手段の靴ブレーキを使えば転倒は回避できたような気もする。
ただ、転倒までの数秒で減速せずにむしろ加速したような感じがするので、間に合わなかったと考えるのが自然だろう。
ツーリングの終わりで不幸な事故に見舞われたものの、「りんどんここに〇す」というバッドエンドには至らなかったことに感謝したい。