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[切実]『理念と経営』は「取材商法」とは無関係です![大迷惑]


詐欺まがいの「取材商法」が横行

このコラムのタイトル、当初は「くたばれ! 取材商法」にするつもりでいたのである。『理念と経営』の看板を背負っている以上、品位を保たなければ……と、かろうじて思いとどまった。

さて、「取材商法」とは何か?
ググっていただければ、注意喚起の記事や、被害に遭った側の“怒髪天エントリ”が多数ヒットするはずだ。

主に中小企業をターゲットに、「うちのメディアで御社を(もしくは社長を)取材させてほしい」と話を持ちかけ、記事化したあと、取材料・掲載料などの名目でお金を騙し取るのが「取材商法」である。

「騙し取る」という点がポイントだ。
掲載料を最初から提示する「記事広告」なら昔もいまもたくさんあるし、双方納得の上で対価が発生するなら、何の問題もない。
取材商法は、一般的な記事広告とは異なる。

①取材申し込み時に料金を明示せず(または「無料です」とウソを言って)、後日請求してくる
②取材申し込み時に提示したよりも高額な掲載料を、後日請求してくる

以上の2類型が、ここで問題視している取材商法である。
詐欺罪に当たるかどうかはビミョーだが、少なくとも「詐欺まがいビジネス」ではあるだろう。

中小企業が主要ターゲットとなる理由は単純で、騙しやすいからだ。
大企業なら立派な広報部があり、経験豊富な広報パーソンがいるから、アヤシゲな取材商法など鎧袖一触に撃退する(そもそも、取材商法の輩も大企業を騙そうとは考えまい)。

しかし、広報担当者すらおらず、取材慣れしていない中小企業の経営者の場合、「メディアから取材申し込みがあった」というだけで舞い上がってしまい、あっさり騙されてしまいがちだ。

取材商法業者も、創業してから年数が浅い中小企業を、まず狙うらしい。「オレもインタビューされるくらい名が売れてきたか」と経営者の自尊心をくすぐって、騙しにかかるのだ。

後日料金を請求して、「えっ? 無料って言ったやん」と怒る相手をなだめすかす手口は、いろいろあるらしい。
たとえば、「昔は人気があった芸能人」をインタビュアーとして派遣し、「掲載料はかからないのですが、◯◯さんに支払う謝礼が必要なので……」と言うとか。

百歩譲って、掲載料を払っても、それなりの広告効果が得られるならまだマシだ。
だが、取材商法業者が運営するメディアが、まっとうに評価される内容であるはずがない。ゆえに、そんなメディアに社長インタビュー等が掲載されても、広告効果など皆無に等しいのだ。

取材商法の風評被害、受けてます!

さて、ここからが本題である。
『理念と経営』は、中小企業を主な取材対象としている経営誌だ。ゆえに、取材商法業者と混同されて、シャレにならない風評被害を被っている。

具体的には、中小企業に取材申し込みをして、断られることが増えた。
それも、最初に電話を入れた段階で、けんもほろろな感じで断る企業が多い。

また、取材申し込み時に、「掲載料はかからないんでしょうねえ?」と警戒心バリバリな声色で聞かれることも増えた。

明らかに、「取材商法の雑誌ではないか?」と疑われているのだ。

取材商法の被害件数が近年どれくらい増えたのかは、つまびらかにしない。が、私の体感では、ここ数年「取材商法を警戒する中小企業」は明らかに増えている。それは……

①取材商法自体が増えた
②取材商法についてのネット情報が増え、企業側の警戒が強まった
③「特殊詐欺」横行の余波で、取材商法への警戒も強まった

……のどれか、もしくは複合要因によるのだろう。

いずれにせよ、中小企業取材を生命線とする経営誌として、多大な迷惑を被っているのだ。

声を大にして、字体を太ゴチにして言いたいのだが、『理念と経営』は取材商法とは断じて無関係である!

小誌は2006年創刊で、もうすぐ創刊20周年の佳節を迎える。
創刊以来の取材企業数は累計800社近くに上るが、そのうちの1社たりとも、掲載料・取材料などの対価はいただいていない。
何なら、過去に取材したどの企業に確認してもらってもよい。

また、内容についても、どこに出しても恥ずかしくない、きちんとした取材記事ばかりだと自負している。

そんな小誌が取材商法と疑われるのは心外だし、「風評被害」以外の何物でもない。
私は小誌編集長になって初めて、原発事故等の風評被害で苦しむ人たちの気持ちが、実感として理解できた。

編集部の「取材商法対策」

取材商法と混同される風評被害が深刻なので、ここ1、2年、編集部としても対策を考えてきた。

まず行ったのは、「媒体資料」をきちんと作り直すこと。取材申し込み時には、依頼書とともにその媒体資料も送付するようにした。

過去に登場した著名企業・著名人も多数紹介された資料を先方が見れば、「詐欺まがいの雑誌ではなさそうだ」と思ってくれるだろうと期待したのだ。

だが、こちらを取材商法と疑ってかかる相手なら、媒体資料など見てくれないだろうから、決定的対策にはならない。

そもそも、取材申し込みの段階で、経営者にまで“辿りつけない”ことが多い。途中でシャットアウトされてしまうのだ。
経営者が事務員に、「アヤシイ取材申し込みの電話は私につながなくていい。全部断ってくれ」と指示しているケースも少なくないのだろう。
とくに、取材商法被害に遭ったことがある経営者なら、「羹に懲りて膾を吹く」で、取材に拒絶反応を示しても不思議はない。

対策その2。
取材申し込みの最初の電話を入れる時点で、「掲載料等は一切かかりませんので、その点はご心配なく」と言い添えるようにした。

これは、対策としては功罪相半ばする。
その一言で安心してくれる人もいるが、逆に「ますますアヤシイ!」と思う人もいるだろう。
なんとなれば、「掲載費用は一切かかりません」というのは取材商法業者の常套句であるからだ。

対策その3として、取材申し込み時に見本誌を社長宛てに送付しておくことも試みている。
事務員に遮られて社長に辿りつけない事態を防ぐためであり、「中身を読めばきちんとした雑誌だとわかってもらえる」という自負ゆえでもある。
じっさい、電話で断られた相手にダメ元で見本誌を送付したら、それを読んで取材を受けてくれたケースも少なくない。

究極の対策は認知度向上

あの手この手で対策しているが、決定打はまだ見つからない。
要は、小誌の認知度が(残念ながら)まだまだ低いことが根本原因なのだろう。

小誌の取材申し込みをけんもほろろに断ったA社もB社もC社も、『日本経済新聞』や『ガイアの夜明け』の取材なら二つ返事で受けたに違いない。

『理念と経営』と同様、中小企業取材を中心に据えた良質なメディアとして、紙の雑誌では月刊『日経トップリーダー』、ウェブメディアなら「ツギノジダイ」などが挙げられる。
前者は天下の日経グループの雑誌であり、後者は天下の朝日新聞社の子会社が運営している。

両メディアとも取材商法の風評被害は皆無ではあるまいが、多分『理念と経営』よりはぐっと少ないと思う。「日経の雑誌なら」「朝日新聞の関連メディアなら」と、信用してもらえるアドバンテージがあるからだ。

かりに私が“取材慣れしていない中小企業経営者”であったなら、『理念と経営』の取材申し込みを受けてどう感じるだろう?

「『理念と経営』? 知らんなァ。これがウワサに聞く取材商法ってヤツか。アブナイアブナイ」――そう思ってしまう気持ちも、まあ、わからないではない。

取材商法と混同されるハズカシメをこれ以上受けないためには、結局、小誌の認知度を向上させるしかない。それが究極の対策だ。じつは、この公式noteもそのための一助として本格始動させたのである。(文/前原政之)


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