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百合姫読切感想・考察集13『今日はふたり、キッチンで。』

 ※ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリーより「みずのさちこ」様の作品を使わせ て頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

 春眠暁を覚えず。
 斯く言う私も春の陽気に当てられて...ではなく、年度はじめ特有の業務処理に追われて、休日はベットの上ですやすやと昼間まで過ごす日々を送っている。

 4月から新しく社会人になった方は、慣れない環境で疲れも溜まっているだろう。その前の就活段階で社会の厳しさを感じた方も多いと思うが、どうしてもやることなすこと上手くいかずに、マイナス思考に陥ってしまうこともあると思う。

 というわけで、今回はそんな就活中の女学生と、その先輩のOLの百合を描いた、百合姫5月号掲載、はづき先生の『今日はふたり、キッチンで』の感想を書いていこうと思う。あくまで個人の感想なので、そこのところはご容赦頂きたい。あといつも多少長くなってしまうので、短く簡潔に...を意識して書いていきたい。それがいつも出来ないのだけれども。

あらすじ:就活15連敗中の舞衣は、同棲中のOLすずかに愚痴をこぼす。すずかは舞衣を励まそうと、一緒に夕飯の買い出しに行こうと誘い...


・「薄さ」と「粗」が目立つ

 作者のはづき氏といえば、本誌にて『ゆめぐりゆりめぐり』を連載していたことで知られている。本作はそれ以来の百合姫掲載となるが、率直な感想としては、「良くも悪くも『ゆめぐりゆりめぐり』から変わっていない」という所だろうか。

 就活で連敗している舞衣を元気付けようとする先輩のすずか、それに応えるために努力しようとする舞衣という流れで、最後は互いの存在が自分の動力源になっている、互いが「好き」合っているという点を再確認する、という構成や動機はシンプルで良いのだが、その結論に達するまでの要素が冗長気味であったり、逆に説明不足であるように思える。

 例えば、舞衣がすずかに「せんぱい」と呼びかけるシーン。その後すずかが「その呼び方懐かしい」と言っていることから、普段とは違う舞衣=舞衣がメンタルに支障をきたしていることをすずかが察するために用意されたのだと推測出来るが、寧ろこのシーンを挿入したことにより、2人の背景や関係性について意識が飛んでしまう。にも関わらず、この後その部分に言及することはない。であればこの情報は必要なかったのでは無いかと思う。以前感想を書いた読切『あした天気になぁれ』のように、あえて背景に言及せず、作中の小道具を用いて背景を読者の想像に委ねる形にしても良かったのではないか。(ましてや読切作品のようにページ数に限りがあれば尚更である)

 また、舞衣が「やりたいこともよくわかんなくなってきた」と言うシーンがあるが、読者からすれば、舞衣が「何をやりたいのか」が提示されない以上分からないし、その中で「彼女のために頑張る」という話になっても、具体が全く伝わってこない。キャラクターの動機が曖昧なまま、「大好きだから、頑張れる」というキャッチフレーズを使われても...、という感は否めないのでは無いか。シンプルな展開は理解しやすいのだが、シンプルなだけでキャラクターの掘り下げが十分に出来ていないと思う。

 その他にも「朝食のパンケーキのために購入したイチゴや生クリームなどを頼もれてもいないのにパフェに消費する舞衣」「疲れてるでしょ、と労わる言葉をかけた4ページ後に買い出しを強行するすずか」と、キャラクターの行動(=ストーリーの展開)そのものに疑問があったり、「大量に商品を買い物カゴに入れながらも腕に軽々とかけるすずか」「そして買った量に対して明らかに少ない量の買い物袋」といった「普段であれば目を瞑れる多少の粗」も気になってしまう。(これは重箱の隅を突きたがる自分だけかもしれない)

 上記の通り、至る所で「薄さ」が目立ってしまっている作品のように思える。さらに、展開やコマ割りなどからも作品としてのクライマックスが分かりにくく、読んでいるうちになんとなく終わってしまった、という印象を読者に与えかねない。登場人物を2人に抑えているからこそ、「推し」のワンシーンを入れて読切の中で強弱をつけていくことが必要なのでは無いか。

・終わりに

 と言うわけで、見出し1つだけの短い文章でなんとか抑えることが出来た。良くも悪くも〜と最初に書いた割には、どうにも批判ばかりの感想になってしまった。冒頭にも書いたが、あくまで個人的な感想なのでその辺りはご容赦頂きたい所である。

 しかし今回は考察なんてものはまるでなく、単に感想を書いただけになってしまった。4月はみんな忙しいんよ...結局6月号発売直前になんとか書いてるだけだし...。そんな6月号は新連載1本の他、読切も2作品登場するということなので、楽しみに待ちたい。

 それでは、駄文失礼致しました。

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