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生まれつき「ノート好きになる環境」は整っていた。

夫はメモを取らない。予定は自分に自分宛てのメールを送るだけ。なにかを書く仕草さえ、ほとんど見たことがない。

だから、わたしは、これまで過ごしてきた環境は”普通じゃなかったのかもしれない”と思うようになった。

わたしはノート術本の著者をしている。やりたいことがコロコロ変わる飽き性なので、なるべく手間をかけずに楽しむノート作りがライフワーク。

もともとノートが好きなのだと思っていたけれど、ふと、好きになるきっかけがあったのではと思うようになった。


祖父がくれた、鉄道写真の表紙の川柳ノート

小学2年生のとき、母方の祖父に1冊のノートを渡された。それは、走ってくる機関車の”顔”写真が表紙になっているものだった。祖父は、表紙に「川柳ノート」と書いた。

「これは、こうやって、横にして使うんだ。凛花さん」

そういうと祖父は、ノートを横にして開いて見せた。横向きに罫線が入っているB5サイズのノートだったが、横向きにすると、縦書きができる。

「川柳を書く。そしたら、1行あけて、また川柳を書く。川柳は五・七・五で書いていく」

そう言って、祖父は自分の書きつけたものを見せてくれた。同じように横向きにしたノートの中に、たくさんの五・七・五がずらりと並んでいた。

わたしは、ひとりで祖父母の家に泊まりに行ったときなどは、ノートを片手に田舎らしい広大な庭や、家の裏手にある畑などを散策しては、言葉遊びを楽しんでいた。

当時のノートは見つからないし、見つけたとしても、その拙さに赤面してしまうだろう。

旅行のたびに、父は「しおり」をつくる

父は教員だった。そして、何事も計画的に進めることを好んだ。
ちなみに父の自慢のひとつは、両手にますかけ線があること。(#なんのはなしですか)

ある金曜日の午後、わたしは肩を落として家路に着いていた。そのころ、高学年特有の、ちょっと湿った雰囲気がクラスの中にあり、人間関係がうまくいっていなかったのだ。

やっと一週間が終わった。憂うつな気持ちで曲がり角にたどり着き、驚く。まだ午後だというのに、父の車があるのだ。扉を開けると母が「いまから東京に行くよ!」と笑った。

そのときも、細かい日程表を父が作ってくれていた。父の「しおり」は、すべてワープロで作られたものだ。イラストがあったり可愛かったりするものではなくて、A4サイズのプリントが数枚。

ノープランで行動するのも楽しいけれど、この先に待っているものがわかっているのも好きだ。何度も字面を指でなぞってしまうわくわく感があった。

おとなになった今は、わたしがしおりを作っている。

わたしが作っているしおり。旅行にも、帰省にも使える。

▼詳細と配布はこちら。

上にないものでいうと、ここ数年は、車で関西方面を旅することが多いので、高速道路のサービスエリアで記念スタンプを押せるページをつくりはじめた。

冷蔵庫に貼られた、母の大量のレシピメモ

母はいつもテレビを観ているイメージがあった。そして、たまに、なにかを書いている仕草を見かけた。

わが家では、父もわたしも弟も、たいてい何かを書きつけていたので、あまりにも当たり前すぎて、その仕草に特に思うことはなかった。

でも、久しぶりに実家に帰ったとき「そういえば、冷蔵庫がすごかったな」と思い至った。

冷蔵庫には大量のメモが貼られていたのだ。どれも、料理のレシピ。母といえば、文系一家で唯一スポーツをよく観ていたなというイメージだったけれど、料理番組もよくかけていた。そして、何かを書きつけているときは、思えば、料理番組ではなかったか……。

母のメモは、チラシの裏を使ってあった。チラシを半分にカットして、束ねたものがいつも”家電”の前に置かれていたのである。レシピは、そこから拝借した紙を使って書かれていた。

実家に帰ったら、深緑色の表紙のリングノートが出てきた。表紙には、バレエで知り合ったものの、教室が違うので年に数回しか会えず、”この子と仲良くなりたい”という強烈な思いに駆られて文通に至った女の子が毎回同封してくれていた、可愛いシールがたっぷり貼られている。

わたしは子ども時代料理をしなかったので、中身はもっぱら、漫画『クッキングパパ』で見つけた”大人になったら作りたい料理”たち。荒岩一味がワンポイントを解説している部分は、当時観たアニメに影響を受けた猫のキャラクターに喋らせていた。

▼のちに、このときの書き方を否定するわたし。

▼ある出来事をきっかけに、さらにレシピノートへの考え方が変わっていく。

▼いま、亀の歩みで書き進めているノート。

ほかの家族たちも、それぞれ自分の”書きもの”をしていたわが家。ノートは、あるいは、書くということは、空気のようにあまりにも当たり前にわが家になって、わたしがノート好きになるのは必然だったのだと、今になってようやく気がついたのだった。

子どもたちはわたしに似たらしく、ふたりとも、いつもなにかを書いている。
姉は弟になわとびをやらせようとしてポイントカードをつくっていたし、5歳の弟はなぜか電卓を使って計算し、その結果を永遠に書き続けるということなどをしている。
そして夫は、そんなわたしたちの様子を怪訝な顔で見つめているのだった。

(#どうかしているとしか)

読んでくださったあなたへ。
あなたや、家族の、”ちょっと変わった書き物”はありましたか? エピソードをお聞きできたらとってもうれしいです。

追伸、


最後までお読みいただき、ありがとうございます♡