一言もしゃべらず育児をするとどうなるか
この3日間、一言もしゃべらずに夫+2人の子どもと生活していました。
なぜそんな事態になったのか
2人目の出産時に緊急手術をしたわたし。命も危ない状況でしたが(詳しくはこちら)、なんとか一命をとりとめることができ一安心…したのも束の間!
手術の時に気道確保のために挿管された管で気管にキズがつき、最終的に腫瘍のような出来物が発生。その影響で声枯れがしたり、しゃべってる途中で急に声が出なくなったり…と日常生活に支障が出る状態が半年弱続きました。
出産後、コロナ過の育休中で家族以外の人と話す機会が少ない状況ならなんとかやっていけましたが、4月に仕事復帰となるとしゃべれない状態は辛い!この半年、薬で治療していましたが改善されないので手術で摘出することを決意しました。
2泊3日の入院を経て行った手術は無事成功!退院時の診察がおわった後、お医者さんからこんなことを言い渡されたんです。
「本来、手術後の数日間声を出さないように入院してもらってるんだけど、お子さん小さいから厳しいんだよね?であれば退院にするけど、次の火曜までの3日間、声出しちゃだめだからね。」
……え、声を出しちゃダメ、ですって!?
家で待っている3歳と0歳のふたりの娘のうち3歳の長女のほうは、ここ最近、自分の名前のひらがなだけ読めるようになったばかり。筆談なんてできる状態じゃないのに、しゃべらずにどうやってコミュニケーションを取れと?もちろん、0歳次女はいわずもがな。
帰り道、「どうしたらいいかなあ」と考えながら入院グッズの入ったスーツケースをガラガラ引いて歩いていました。
しゃべる以外の意思疎通方法
家に到着し、玄関のカギをガチャガチャ、ガチャ。
カギを開けている音でわたしの帰りを察したのか、ドタドタ小さな足が走ってくる音が聞こえてきます。ガチャリ、とカギが開いてドアを開けると、そこには3日ぶりに会えた長女の姿がありました。
「おかあしゃん、おかえり!」
出迎えてくれてありがとね!3日間会えなくてさみしかったよ。元気にいい子にしてた?
……と、話したいことはたくさんあるのに。
しゃべってはいけないので、無言のまま笑顔で娘をぎゅーっと抱きしめます。そんなわたしの異変を感じたのか、心配そうな眼で見上げる長女。
「おかあしゃん、なんでしゃべらないの?」
しゃべりたいんだよ。でもしゃべれないんだ。
言いたいことを伝える術がないので、ちょっと困ったにこにこ顔で娘を見つめるしかできません。すると奥から夫が出てきて「おかあさんは病院に行って喉がよくなったけど、今はまだおしゃべりができないんだって」と状況を通訳してくれました。
しゃべれない時の意思疎通方法
夫とは筆談でコミュニケーションが取れますが、文字の読めない娘とどう意思疎通をはかればいいのか。声出し禁止の3日間の間、主に2つの方法で意思疎通をはかりました。
ジェスチャー
もうこれしかないでしょう!と、まず伝えたいことがある時はジェスチャーを使って伝えました。
「ごはんできたから食べよう。」「手を洗いに行こう。」「お風呂に入ろう。」「YouTubeはもうおしまいだよ。」「歯磨きしよう。」「OK/いいね!」「ダメ!」「こっちにおいで」…などなど。
3歳児、どれだけジェスチャーが通じるかな?と思ったら、思ってた以上に伝わる結果に。(「お風呂」と伝えたものが「シャワー」と伝わるくらいの誤差はありましたが^^;)
「難しいかな?と思ったけど、色々なことがわかるようになってるんだなあ。」と、思いがけず子どもの成長を感じるわたし。
わかったね!すごいね!と伝えたいのに、気持ちを伝える術が拍手した後に頭をなでるくらいしかなくて。さらに、拍手からのなでなでのルーティンが終わると、また「しーん」と静寂が訪れるのになんとなく居心地の悪さを感じて、後半は本当にジェスチャーが必要な時だけするようになってました。
音声読み上げ
基本的にはジェスチャーで伝えてましたが、身振り手振りでは伝えるのが難しいこともあります。さあ、どうやって伝えよう…と考えていると、わたしの目にとある物が飛び込んできました。
それは…こどもちゃれんじの「ひらがな・かずパソコン」!
ひらがなや数を学習するためのおもちゃで、ひらがなのボタンを押すとその文字が発声される仕組みになっています。また、右下の「できた▶」ボタンを押すと、それまでに押した複数の文字を続けて発声してくれる機能もついてるんです。
例)「お」「は」「よ」「う」→(できた▶)→「おはよう」
これで、ジェスチャーで対応しきれないことを伝えられるように!ただ、文字を1つ1つ押す必要があり手間がかかるのが難点…。
またまた困っていると、「iPhoneのメモに伝えたいことを文章で打って、読み上げ機能で発声してもらうのもいいかも!ちゃれんじのおもちゃより簡単に文章作れるし。」と派生形のアイデアを思いつき、最終的にはiPhone+音声読み上げに落ち着きました。
どんな変化があった?
3日間、母であるわたしがしゃべれない状態でいると、子どもにも影響が見られました。
子どももしゃべらなくなる
声を出せないのはわたしだけなので、娘たちは今まで通りしゃべってくれて全く問題はないわけです。
にもかかわらず、わたしにあわせて言葉を発することが減ったり、わたしがジェスチャーでした返事に対して、ジェスチャーで返答などしてました。
一番驚いたのは、おままごとで遊んでいる時のこと。あまりにひとり静かに何かで遊んでる様子だったので
「何やってるんだろう?こういう静かな時って、悪いいたずらをしてるんだよね…」と思いながら一人遊びしている娘のほうを見ると……。
「え、しゃべらないでお医者さんごっこしてる!!」
その異様な光景にびっくりしました!
しかも、しゃべらなくなったのは3歳の長女だけではありません。0歳の次女もわたしが入院する前は「あー」「うー」という喃語をよく発していたのですが、入院後は喃語を聞く機会がほぼなくなりました。
環境が与える影響ってこんなにも大きいんですね…。
伝えることをあきらめる
上の「しゃべらなくなる」にも関わってきますが、この3日間、ジェスチャーにしろ音声読み上げにしろ、相手に何かを伝える労力が非常に大きくなりました。なので伝えるのがややこしい内容や、そこまで伝えなくても最終結果には影響がないようなことだと「伝えるの大変だから、そこまでやらなくてもいいか…」とあきらめる自分がいました。
そして、この伝えることに対するあきらめは、声を出せないわたしだけじゃなく、子どもも同様にあきらめるようになっていたんです。
どうしてそう感じたか。それは、1日100回くらい言われている「おかあさん、見て!」というセリフが長女の口から出てこなくなったことからでした。いつもと違う雰囲気を感じ取りつつ
相手の声が出ない=反応がない=言ってもムダだ
と、思ったんでしょうね。反応がないと相手にあきらめの気持ちを抱かせることを学びました。
3日間を乗り越えてみて
思考錯誤しながら取り組んだ結果、3日間なんとか声を出さずに乗り切ることができました!
が、会話はもちろん、絵本の読み聞かせや手遊びなど育児中ならではの声を出す場面には対処しきれず、かなりもどかしかったです。
何より、3日間ではありましたが親の声が出ていないと子ども声を出さなくなるんだ!という発見は驚愕でした。人間は自分をとりまく環境に合わせようとする習性があるんですね。
喉にできものができたことで、約6か月間子どもと一緒に歌を歌ったり絵本の読み聞かせをすることができてなかった分を、これから取り返すくらいの勢いでたくさんおしゃべりしたり、歌や絵本を楽しんでいきたいです。
最後に。
自分と目が合ってるけれど子どもがおしゃべりをやめない。
そんな時は、口パクで何かをしゃべっているふりをしてみてください。すると、「何をしゃべってるの?気になるけど聞こえないから話すのをやめよう」と子どもが静かになります。
3日間しゃべれず大変でしたが、子どもを静かにさせる技を習得できたのはひとつの成果だったかも!?
お子さんがおしゃべり好きでなかなか静かにならない…とお困りの方、よろしければ試してみてくださいね。