資本主義社会におけるアーツアンドクラフツ運動の憂鬱
娘(小5)が登校を渋るので、愛車を駆って千葉県県立美術館の「アーツ・アンド・クラフツとデザイン展」に行ってきた。
夢想家ウィリアム・モリスの、「いちご泥棒」を見に。
娘は一時期、NHK Eテレの「びじゅチューン」に一大ハマりし、
古今東西様々な美術工芸品の「存在」を知るという、有難い礎が出来ていた。
展示されている版画絵やタペストリー。
モリスが窓から眺めていた庭の薔薇やその他植物の茎、蔓、葉、そして花そのものが、布や紙の中に、左右対称に表現されている(中には違う作品もある)。
特に紙は、近づいてその筆致を見れば、当然ながらそれが手描きであり、葉脈の表現などに微かなバラつきがあるのが認められ、手作業ならではの温かみを感じる。
が、デザインとしてはとてもグラフィカルで、とてもデジタル。まるで、
「0-1/0-1/0-1・・・」で表すことが出来るコンピューティング領域のよう。
さて、モリスは社会主義者(社会主義者=ロマンティストのイメージね)。
曰く、「労働に喜びを!」。
数点の作品解説に、モリスが夢見た「ユートピア」の語句が認められたが、
もはや「労働」=ディストピアのイメージが先行する2024年よ。
だってその労働力を擁しているのは誰でもない、「資本を提供している者」なのだから。
もしその「労働」が、あくまでも芸術や、快楽の為であるならば、それは歓びに変換し得ようが。
産業革命以降、労働が労働たる所以はひとえに、資本主義社会における、資本提供者へのリソースの提供に他ならないからだ。
資本主義、貨幣主義の行き過ぎた弊害に警鐘を鳴らすイデオロギーとして生また”Socialism”という言葉の響きそのものは、SNS時代に生きる私達にとってなんと耳馴染みがよいことか。
産業革命によって民の生活が便利になり、より発達したことで、中流家庭以下を取り巻く住居環境・家具・道具はどは、一気に無味乾燥な「モノ」となった。
それに対する嘆きと原点回帰志向がアーツ・アンド・クラフツ運動となったのわけだが、結果的に美を極めていった先が、やはり資本ありきとなってしまったのは皮肉というべきか、当然の帰結というべきか。
イギリスで勃興したアーツ・アンド・クラフツ運動はやがて日本を含む全世界に波及し、当然アメリカのアーティスト達も影響を受けた。
こちらは、ティファニー家の長男が設立した「ティファニー・スタジオ」による「三輪の百合のランプ」。
当時のアメリカでベストセラーになったらしい。なんと美しいシルエットでしょうね、この茎のエロティックなことよ・・・。
そして、ご存知フランク・ロイド・ライト(写真NG)のステンドグラスも。
「自然との融合」を標榜するフランク・ロイド・ライトにも多大なる影響を与えた同運動だが、次第にアナログ・手作業に固執する姿勢に見切りを付けるようになる。その後に確固たるスタイルを確立したロイドのフロンティア精神も、想像に難くない。
デジタルとテクノロジー、そして人類のマシン化が加速度的に発達していく現代社会で、「労働」という枠組みから外れていく人達が増加していく。
個人が発達した先で、コミュニティが形成される。それは小さな宇宙。
どう発展していこう?
えぇ、如何様にも!!
そんな時代の瀬戸際で見た気がする、アート・アンド・クラフツ運動でした。
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