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みんな、見てほしい

名古屋の場。子どもたちの見てほしいが部屋の中で渦を巻いていた。見てほしくて発される言葉。その日、ワークの内容に少し不安が残っていた私は、その言葉にくすぐられる。静かにしてほしいと思うけど、ねえ始めてもいい?って言葉にも、静かにしましょうよもなんの意味もないことがわかるから、始めたいなあ、って気持ちですわる。

子どもたちは見て欲しくて動く。見て欲しくて、こちらを見る。見て欲しくて、目を引くことができるようなことをする。率直に見て見てってくる時もあるし、乱暴な言葉や攻撃的とも取れる言動に現れることもあるし、あなたに、この場に、興味はありませんっていう反対側の矢印の力を使って目を引こうとすることもある。これは大人もおんなじか。

子どもたちはこちらを見ていないようで、すごく見てる。それがちゃんと感じられる状態になれば、私はもう大丈夫。あとは、私の言葉をまっすぐに現すだけ。そして、返ってきたものを丁寧に聴くこと、これを繰り返すだけ。

あのさ。私ね、人間って、とっても見てほしい生き物だと思う。だけどその表現が、「見てほしい、もっと見て」って言えない時っていーーーっぱいあるよねって思う。どうして私たち、素直にただ、ねえ見てほしいな、って言えなくなったんだろうね。そういう風に言うのが難しい時あるよねえ。そして私は、今、みんなにめっちゃ見てほしい。見てもらえたらすごく嬉しい。

そう言うと、いっせいに集まるまなざし。

ありがとう、めっちゃ安心した。みんなに見てもらえて本当に嬉しい。みんなもさ、見てもらえたら嬉しいって気持ち、わかる?そう聞くと、顎もコクコク動いて頷いているようだけど、エネルギーはもっと大きくこちらに同意しているように感じる。

今日のテーマは、途切れない線、動かない点。石とクレヨン、大きな紙を使って、色と線と石と過ごす時間。大きな渦巻きをいくつも描いた。

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子どもたちは知っていることをいろいろ話してみたいのだと思う。それ、普通にどんどん、教えてくれる?っていう空気の中では、ポロポロと話してくれる。

「火と水とはセットだと思う。それだと、ぴったり全部がひとつになるって感じがするでしょ」

「自然のいのちの始まりは、みんな種だと思う。」

「このぐるぐるの上に立っていると、どんだけ大きな声で泣いても誰にも何も言われずにそのまま泣けそう。」

「もしかしたらだけど、大体のものは虹でできてるんじゃない」

言葉が説明のつかないものであればあるほど、よく聴いているように見える。ハートが知っていること、叡智と言われるようなものに近いもの、knowingという言葉で表されるような言葉であれば、どれだけ話してもみんな静かに聴いている。子どもたちの体よりも大きな何かが、とっても興味深げに身を乗り出して聴いているようなイメージ。

今日はたくさん石を持ってきた。たくさんの石の中から、自分の石を一つ選ぶ。ずっともっていると、コロコロと転がしたくなる子どもたち。わかるよ。でさ、その石が生きてるとしたら?そして、あなたのところに、あなたを大好きでやってきてると私は思う。そしてそして、あなたがどんなにその石を乱暴に扱っても、石はあなたのことを嫌いにならないよ。だから、大切にしてあげてほしい。

子どもたちはじっと石を見る。じっと石を見る。石と子どもたちの間に、つながりが見えるみたい。まっすぐに、橋がかかるように。

子どもたちといると、子どもたちのたった一瞬の沈黙がものすごく密にたっぷりと感じられる時がある。子どもたちはいつも敏感にエネルギーに聞き耳を立てていて、「本当のこと」が聞こえてきた瞬間、全身が耳みたいになる。言い表すことが難しいけど、私はいつも子どもたちの神聖さに語りかけることをすごくすごく大切にしている。どんな反応が返ってきたとしても、彼らが全身耳になるような、彼らの大きな何かが注目する言葉で話しかけたいと思っている。ああ、これもおとなとこどもおんなじだな。

さて私たちったらこんなに繊細で敏感らしいけど、この繊細さを、敏感さを、私たちはどう生きてきたんだろう。どう生きていこう?

午後と夜はおとなたちと過ごす時間。

みんなと共に座りながら、繊細で敏感なわたしを、どう生きましょうか。そんなことばっかり思っていた。安心は伝播するし、心配も伝播する。だけど誰かにケアしてほしいわけじゃなくて、ただ一緒にいられたらそれでいい。なんだこれは、みんな妖精なんじゃないかな。ただ言葉をつむぐみんなが妖精に見えてくる。

すごく楽しい
考えたり感じたりを行き来したなあ
言葉にならない
今日のわたしはなんだか怒っている
今日わたしは拗ねている

そんな風に話される言葉たちが、きらきらひかる雫みたいにそのままで自然で地球みたいだった。妖精みたいなおとなたち。本当はみんな妖精なんでしょ、かみさまなんでしょ。

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夜はある男性とお話し。わたしは1人の人を源に絵本を描くっていう仕事をしていて、そのためのインタビュー?いやいや、わたしの中ではデート。そのための時間。この絵本は彼の奥さんからのプレゼント。絵本を描くんだよと話すとちょっと怪しんでいるよと前情報で聞いていた。どんとこいだったんだけど、話してみたらとてもとても柔らかい優しい可愛い人だった。わたし怪しいですか、と聞くと笑ってくれた。少しずつほぐれていく会話の中で彼は「ちょっと変かもしれないけど」と言いながら、ミツバチと会話することや、見えないものを感じ取る話をたくさんしてくれた。昔っから繊細でね、それがあんまりいいことじゃなくて、と。

お話の最後に、どうかそのまま繊細なあなたでいてくださいね、とっても素敵だし、それが息子さんたちにとっても助けになるから、と言うと、そうかなああと困ったように可愛く可愛く笑っていた。とっても柔らかい空気だった。

人間って、柔らかいんだな。人間は柔らかいから、木や石や大地がこんなにも優しくしてくれて、過保護に守ってくれるのかもしれない。だったら、どうして人間がこの地球で生きているのは、柔らかさっていう役割があるんじゃない?こういうこと考えるの、大好き。

次の日の朝、窓の外の海を眺めていたらイルカが現れた。昨日会った妖精のみんなのことを思い出して動画を送ったら、とっても喜んでくれた。それがとても可愛かった。

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イルカくん、わたしは今、君が泳いでるのを見てるよ。現れてくれてありがとう。見てるよ。可愛いね。ありがとう。窓ガラスにピッタリくっついて湾の中を泳ぐ彼を見ながら、何回も呟いた。

そういえば、と、昨日のワークショップで今日のわたしは拗ねているって話してくれた女性に連絡した。昨日の拗ねている子は今、どんな様子ですか?お返事が来た。たくさん柔らかいところを見せてくれる文章の中に、「見て欲しかっただけなのかな」って言葉が目に入った。そのことを全力で肯定したい気持ちになった。

私たちみんな見てほしいよ。当然見てほしい。おとなだって子どもだって、見てほしい。そう真っ直ぐ思っていい。だから、もっとまなざしを向け合って愛し合って支え合って生きていこうぜ、と思った。

みんなが今日も柔らかいまま生きられますように。また可愛い笑顔を拝めますように。

絵本の受注を再開しました。
頼んでくれたら、超盛り上がります。

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平田里菜

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