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番外編_ 父の昔話 「おもらしと検便」
姪っ子たちに「夜寝る前に何かお話して」と言われたので、私が幼い頃、私の父がよく話してくれた想い出話をすることにしました。
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"あーちゃんとかんちゃんのおじいちゃん、つまりトトが、子どもだったころの話をしよっか。
トトの名前は知ってるかな?
そう、マコト。
マコトには1つ違いの弟のヒトシってのがいる。
これは小学生だった2人の、ちょっとした「しかえし」のお話。"
ゴロ、ゴロ、ゴロ
ある日、次男のヒトシは、夜中にハッと目が覚めました。
お尻には、じーんわりと暖かくて、懐かしい感触。
そうなんです、ヒトシは小学5年生にもなって、おもらしをしてしまったのです。
あーやっちまった。
兄弟にバレたら笑われちゃう。
シーツ替えたりするのも面倒くせえ。
こいつは一体、どうしたもんかな。
ふと横を見ると、そこにはグースカいびきをかいてるマコトの姿。
そうだ、こいつがしたことにすればいいんだ。
ヒトシは布団から出ると、
マコトをゴロ、ゴロ、ゴロと転がして、
自分がおもらしをした布団に寝かせました。
これでよし。
それから、自分は新しいパンツとズボンに履き替えて、
何事もなかったかのように、マコトの布団で眠りについたのでした。
さあ次の朝、マコトは起きてびっくり仰天。
なんと、自分がおもらしをしてるではありませんか!
「小学6年生にもなって嫌だねえ」とお母ちゃんには呆れられるし、妹たちにはクスクス笑われる始末。
でも、ふと疑問に思います。
待てよ?俺は昨日、隣の布団で寝てなかったか?
なんだ、良く見たら、そもそも俺のズボンの中は濡れてないじゃないか!
ハッとしたマコトが周りを見渡すと、目に入ったのは、ニヤニヤしてこちらを見るヒトシの顔。
あー!!!絶対、あいつだ!
ヒトシのやつが、やりやがった!!
「母ちゃん、俺じゃない、ヒトシだよ!ヒトシがやったんだ」
「何バカなこと言ってんだ、人のせいにするんじゃない。さっさとシーツ、洗っておいで」
マコトは泣く泣く、洗濯板にシーツをこすります。
ちくしょう、ちくしょう、ヒトシめ!
悔しい、悔しい、覚えてろ!!
マコトは、ヒトシにいつか仕返ししてやろうと、心に誓ったのでした。
同じ釜の飯
"あーちゃんとかんちゃんは、小学校で「尿検査」ってやったことあるよね?
昔はね、よく、「検便」っていって、うんこを綿棒みたいなものですくって提出する検査をやっていたんだって。
トトが通っていた小学校でもちょうど、その検便の時期になったんだ。"
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マコトはあることを思いついて、ヒトシに声をかけました。
「おいヒトシ、お前のクラスも検便のキット配られただろ?
もしよかったら、俺がお前の分も提出してやろうか?
お前、めんどくさがりだから、いつも提出遅れて先生に怒られるだろ。」
「え、俺の分も?」
「ああ、母ちゃんが作った同じ飯を、毎日一緒に食ってんだ。出るモンもそこまで変わらねえだろう。」
「それもそうだな。じゃあ、頼むわ。」
楽できるのであれば、とヒトシは深くも考えず、マコトに検査キットを渡したのでした。
それからマコトは何をしたかというと、
なんと、庭に落ちていた犬のフンをとって、ヒトシのキットに入れたのです!
そして何食わぬ顔でヒトシにそれを渡しました。
騒ぎになったのは、検便検査提出から数日経ってからのこと。
いきなり病院から、学校に電話がかかってきました。
「森逸崎ヒトシくんの便から、寄生虫と病原菌が発見されました!ヒトシくんを今すぐ保健所に連れて行って、再検査させてください!」
ヒトシの担任の先生は大慌て。
走って教室に行き、心配のあまり、教室中に響き渡る、大きな声で言いました。
「ヒトシくん!!
あなたのウンチから、寄生虫が発見されたって!!
あなた、体は大丈夫なの!?」
先生の声があんまりにも大きかったので、
教室中の子供たちが、どっかーん!と大笑い!
ウンチから寄生虫だってー!
ヒトシくん、きたなーい!
大丈夫かよー!ぎゃははは!
ヒトシは何が何だかわかりません。
好きだったマユミちゃんも、ヒトシのことを見てクスクスと笑っています。
ヒトシは、とても恥ずかしくなってしまいました。
待てよ、検便を用意してくれたのは兄貴だ!
兄貴のやつ、何を入れたんだ!?
ヒトシは急いで家に帰ってマコトを問い詰めました。
「おい兄貴!どういうことだよ!」
そこでマコトは、ヒトシに種明かしをしました。
そしてせいせいした顔をして、ヒトシに言いました。
「どうだヒトシ、参ったか!
自分のおねしょを俺のせいにして、恥ずかしい思いをさせた罰だ!
これにこりたら、もう二度と、人に自分の失敗をなすりつけるんじゃないぞ!!
はっはっはっはっはーーー!!!!」
それからというもの、ヒトシはとっても真面目な子になって、その後もずっと、自分がやってしまった失敗を、人のせいにすることは決してありませんでしたとさ。
おしまい。