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めちゃコミ1話50円で消費される女

7月。新社会人になって、そろそろ仕事に慣れてきたであろうあなたに書いている。少しばかり疲れもたまって、少しばかり刺激が欲しくて、誰かに癒されたいと思うあなたに向けて書いている。

ずっと独身でいるつもり?」から拝借したこのタイトルは、まるで10代の私そのものだ。

 「そういうもん」

男性がホテルに女性を連れ込む際に使い古された「何もしないから」というセリフがある。誰が聞いても「何もしない」というのは紛れもない嘘なのだけど、東京で働き始めたばかりの18の私はこの上なくアホで、「何もしないなら大丈夫か。そういうもんなのか」と本気で思ったことがあった。

服を脱がされ始めた時、冷静に「結局するんかい」と脳内でツッコミを入れたことが懐かしい。

その男性とはしばらくそういう関係が続いたのだけど、生意気にも、誘われれば応えるだけ。「相手が勝手に思ってるだけだし」と私はどこか他人事だった。

同じ職場で、その男性の奥さんや子供の話題が出て初めて、私とその人の関係が世間一般的にいう「不倫」だと知った。でもその時も、私は「そういうもんなのか」と他人事だった。
今考えたらきっと自分を正当化するための現実逃避だったのかもしれないけど、私はやっぱり「勝手に思われてるだけだし」と意思を他人に委ねたままだった。
不倫に溺れる女の漫画を読んでは、「私は違う」「私は大丈夫」と自分に言い聞かせていた。


「俺と一緒になってほしい」と言われた時、「順番が違うだろう」と私が言うと、男性は奥さんの両親に「離婚してこの子と一緒になる」と言ったという。

今なら一発殴ってやりたいその言動にも、18の私がその男性を信じきるには十分だった。

残念なことに、その男性の奥さんが職場に乗り込んできたり、社長に2人の関係がバレる頃には、私はその人のことを好きになってしまっていた。
これは認める。多分どうしようもなく好きだった。
お約束の「待っててくれ」の大安売りにさえ、希望を見出した。


ところがその後、職場をクビになって、実家に強制送還されて隔離生活を送っていたら、その男性の奥さんから実家に電話があった。

「まだウチのと会ってるんですか?いい加減にしてください。お腹に赤ちゃんがいるんです!」

無論、私ではない。
会ってなんかいない。
奥さん妊娠って、何。

それまでアホみたいに「もしかしたらまた迎えにきてくれるかも」なんて心のどっかで思っていた私は、ことごとく打ちひしがれた。
そう思っていたこと自体が恥ずかしいし馬鹿馬鹿しいし、何しろ悲しかった。

しばらくは「そういうもん」と割り切れないまま、まるで自分が一世一代の大恋愛をしたかのような感覚に陥っていたけど、冷静に見渡せば世間一般的にはよくある話で、世間一般的には最も非難されるべき行為をしていたのだということを後になって思い知った。

結局、そういうもんでしかなかった。


仇怨

こうして私の「自分かわいそうキャンペーン」は幕を閉じる。

私はその男性の奥さんと子供を非常に悲しませた。
奥さんは最終的に電話で私に対して「ウチの旦那は何回も同じこと繰り返している。あなたがかわいそうだ」とまで言っていた。この人には一生かかっても頭が上がらないし、何回謝っても謝りきれない。

職場の人にも迷惑をかけた。大好きだった上司との縁も自分の居場所も自分でなくした。社長には最後まで「裏切り者」と言われ続けた。その通りなのだから反論できる訳が無い。

両親も悲しませた。私が未成年だということで、社長とその男性と奥さんとの話し合いの場には両親が対応してくれた。
母は目がパンパンになるまで泣き腫らした私を見てひとこと、「好きだったんだねえ」とだけ言って肩を優しく抱いてくれた。

その男性との関係を伝えていた友達は離れていって、その後連絡を取ることは二度となかった。

「不倫は誰も幸せにならないんだよ」と上司に言われたことがあった。
その言葉を何度も繰り返し思い出し、本当にそうであることを私は痛感した。


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ちょっと話が合うからとか、一緒にいて楽しいからとか、純粋に一緒にいる時間が長いからだとか。そんなことはどうでもいい。
家族という存在と向き合いもせず余所の女に手を出す時点で、その男は大した男じゃない。
求められたからといって体を開く時点で、あなたはちっともいい女じゃないし、最も悪い。


新社会人になって、そろそろ仕事に慣れてきたであろうあなたに書いている。少しばかり疲れもたまって、少しばかり刺激が欲しくて、誰かに癒されたいと思うあなたに向けて書いている。

自分のいっときの欲求が、周りの人を不幸にし、自分を不幸にし、自分の価値を下げるということを、よくよく念頭に置いて行動してほしい。



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