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2月24日を前に思うこと〜1年前、モスクワにいた日本人の独り言〜

2022年2月22日、20時頃だっただろう。こびりついた汚れでくもった窓から覗く無愛想な縦長の建物、足元からはセントラルヒーティングからもわぁとした熱気、狭い机にパソコンを置く。注目の的は、右手にある加湿器の残りの水量。1時間程度遅れて始まった老害の話は、ロシア帝国の話から始まった。老害、だるい。聞き流していく。まって、これを本気で話していたら。ふと背筋が凍りついた。

翌日は穏やかだった。いつも通り大嫌いな先生のオンライン授業を聞き流す。終わると翌日に買っておいた5割引きのブリンチキを口に頬張る。薄いパンケーキのようなもので、ロシアやウクライナなどで頻繁に食べられているものだ。ブラジル人との共同生活を強いられている部屋にはなるべくいたくない。マイナス3度?あったかい。身支度5分で部屋を飛び出した。寮の目の前に広がる池が好きだ。林立しているソ連式の高層ビルをバックに、雪化粧をした今にも折れそうな白樺の木と凍りついた池は、全く美しいものではない。外国人がトーキョーに憧れるように、ロシア的だという理由で色のない景色に見惚れてしまうものだ。悴んだ手でスマホを持ちながら、雪遊びを楽しむ子どもたちを映す。1時間くらい話倒した。お相手は恋人?残念ながら、産みの親だ。昨日の演説、マジでイカれていたと。

2022年2月21日のインスタグラムより

日が落ちてきた。日本では22時半を回る頃だろうか、母の1日のエネルギーが潰えた。邦ロックをガンガンに聴きながら、歩く頃15分、少しお高いスーパーに着いた。成城石井とかにあたるのかな。ここは割引商品の宝庫だ。その日の夜から3食分を買い漁る。それだけではない。私調査によると日常生活圏内で一番美味しいアーモンドミルクのカプチーノを共に、外国人用に書き直された罪と罰を読みながら、幾らか時間を共にした。

帰宅後、嫌々ながらに翌日の宿題も終わらせる。うたた寝しながらもベットで簡単な夜ヨガをする。8時にアラームを設定。これでぐっすり寝る準備が完璧だ。おやすみなさい。2022年2月23日の夜は、テキトーな1日の夜と置き換えても変わりようのないほどのものだった。

2023年2月24日が近づくのが怖い。だって昨日も今日もきっと明日も、穏やかな夜なのだろう。睡魔に勝てずに夢の世界へ。アプリによると最近は5分で眠りに落ちる。きっと1年前も5分で穏やかな日常に別れを告げたのだろう。しあさっての24日、どうかどうか、何も起きないで欲しい。

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