学生が子育てしながら就活なんて、できるのか? 育児就活の苦難から内定にいたるまで
「残念ながら貴意に添えない結果となりました」
1歳になった息子を一人で遊ばせながらばたばたとリクルートスーツを身にまとい、ファミリーサポートに子を時間ギリギリで預け、車を飛ばして参加した選考会の数日後、私のもとに届いたメールにはこう書いてあった。
子育てしながら転職活動はたまに聞くし、その難しさも耳にするが、「子育てしながら就職活動」が成功した人はどのくらいいるのだろうか。
そもそも学生出産の母数自体少ないだろうし、今まで学生出産した人たちの記事を読んだ中では「大学をやめて育児に専念する」か「まずはパートタイムから始めて生計を立てる」という先例が多かった。
私の周囲にも似た状況の人はいないし理解者も少ない。探しても出てこない「学生出産をして、就活をして、新卒で内定を獲得した人」のお話。前例のないことに未来が見えなくて不安だった私は、ただただその人の、いるかどうかも分からない人の話を聞きたかった。
今回は、そんな過去の私に向けた、過去の私が知りたかった体験談を書きたいと思う。そして似た境遇にある人にとっても、少しでも力になることができたら嬉しい。
まず、私の場合「新卒正社員として働きたい」という思いが強かったので、いわゆる新卒としての就職活動をしたが、それを人に勧めたいわけではない。
子どもを育てるだけで本当にすごいことだし、ましてや両立して働くことはどんな形であれ尊いことだと思う。まだ私は全然両立できていないので家庭はぐちゃぐちゃである・・・。
ま、「子育ても正社員として働くことも両立したい」と思っている人(特に学生?)の参考になればいいなと、思いながらつらつらと書いていきたい。
育児就活は不安だらけ
育児就活はとっっにかく不安が多かった。ちょっとまずは当時抱いていた不安を列挙してみたい。
・「正社員」として働けるのか?
・前例を知らないから内定もらうイメージが全く見えない
・企業にとってめちゃくちゃハンデじゃね?
・てか説明会も選考も気軽に行けないから就活も圧倒的ハンデだわ
・そういえば夏冬のインターンに一社も参加してないオワタ
・育児してますって言うと嫌がられそうだし言わない方がいいのか…?
・でもウソはつきたくないからいつ言えばいいかなぁ
・東京はまだありえても、福岡(地方)就職は無理かも…
・とにかく雇ってもらえればいいから何やりたいとか分かんない
(当時の気持ちを思い出して悲しくなってきた…)
こんな不安を抱えていた私、とはいえ黙って泣き寝入りする訳にもいかないので何をしていったか、何が大変だったか、ここに赤裸々に記していきたい。
1月
「新卒・正社員で就活するぞ!」と決める👧
パートタイム、契約社員、専業主婦・・・進路の形態には色々な選択肢がある。が、私は「新卒として正社員で入社する」ための道を歩むことを選びとった。
「契約社員で働いたら?」と言われたこともあるが、その時はぶっちゃけ契約社員もパートタイムもそんなに違いが分かっていなかった。(やばい)
新卒・正社員で就活しよう!と考えたのはざっくりこんな理由である。
👉 安定して子を養いたい
👉 柔軟な働き方を取り入れている企業も増えてきてるし、そんなところで働けたら…理想だな…
👉 転職するかもな未来を考えた時に、選択肢が広がりそう
👉 一生に一度しか使えない「新卒」カードを使ってみたい(もったいない気質)
ま、石油王の妻にでもなっていればまったく違う選択をしてただろうな。👳
2月
リハビリをかねて、インターン選考会に参加してみる👶
育児している人にとっての大きな問題は「社会との断絶」だと思う。
育児全盛期を終えて保育サービスに任せて断絶された社会に再び戻ろうとした時、思うように体や頭が動かないことは、経験者なら共感できることではないだろうか。
私はもともと学生時代は活発な方で、学外の活動に積極的に参加していたこともあり「学外の人たちや社会とのつながり」は割とある方だと思っていた。
ところが一転、妊娠から産後約1年間は、それがパッタリと消える(そして徐々に戻る)のである。
私の場合、妊娠が分かってから人に打ち明けるまで時間を要した(学生出産を告白するハードルが高かった)こともあり、妊娠後は人との連絡を減らし、ほぼ家にこもりきりの生活を送っていた。
そしていよいよ卒業が視界にちらつき始め、就活するか!と決めたものの待ち受けていた「面接」の場で、2年間家にこもっていた人間が突然ペラペラと話せるはずがない。
というわけで社会復帰のリハビリを兼ねて大手印刷会社のインターンの選考会に参加した。
その結果が、この記事の冒頭の言葉である。
社会復帰、なかなかしんどいぞ。
そしてさらなる問題は、私の周囲はママ友が少なかったので孤独であることだった。
加えて、学生出産をして在学年数が伸びているので、同年代の仲良かった友達ともどんどん離れ離れになり、気軽に相談できる人は限られている状態だった。
だからまずは社会復帰と孤独を打破するためにも、近い経験をしている人にとりあえず話を聞きにいくか…と、再び重い腰を上げた。
3月
育児しながら働いている人に話を聞きに行く🏃♀️
大学の先輩で学生出産をした人がいたので子を連れて会いに行ったり、OB訪問アプリMatcherを使って「子育てしながら働いています」とプロフィールに書いてある女性に会いに行ったりした。
もちろんすべてのOB訪問は基本的に子連れで行ったのだけど、それも大変だった。特に「場所選び」の問題。
👉 子連れで1時間くらい話しても大丈夫そうな場所
👉 初対面で社会人とお話するのに失礼ない場所
👉 さほど遠くなく、子を連れて移動するのにそこまで大変じゃない場所
以上の基準を満たす場所を探すのがまず大変だった(本心はサイゼリヤがいいよぉ〜と思いながら複数提示して選ばれたのはカフェ)。
会ってお話している間もまぁ息子は言うこと聞かない…😂 ので、1時間もカフェにはいれなかったりした。
「子育てしながら働くってどんな感じか」「育児中の新入社員ってぶっちゃけどう思いますか?」などなど率直にお聞きした。
その中でも、Matcherを通じて会った女性から、その方の姉妹が「学生出産をして、地方で就活して就職したよ〜」と聞けたのは、とても大きな励みになった。
前例が!いる!!!
そしてOB訪問と同時に本選考も進めていたが、ことごとくうまくいかない状態は続いていた(ES敗退、一次面接敗退など)。
この時は「育児しながら新卒入社はなんとなくいけそう、てか雇ってもらえたら業種も職種も何でもいいや」状態だったので、たぶんそれが敗因だったと思う。。
4月
いろんな人に相談、自己分析シートをガリガリ📕
焦りも増してきたが、いまだ就職するイメージが湧かない。
もう恥を捨て、これまでお世話になった人や大学の知り合い、就職支援アプリを使って色々な人に面談(相談)を申し込んだ。話を聞いてもらったのはトータル10人くらい。
話を聞いてもらうことも、情報を集めることも育児中の身には課題が多い。
👉 説明会や選考会の時間は、息子を代わりに見てくれる人を探さなくてはならない
👉 長時間の合同説明会の参加が難しい(一時預かりを利用しても高額になる)
👉 夜のタイミング(息子に晩ごはんを食べさせ、お風呂に入れて寝かしつける時間帯)の選考会や座談会に参加できない
そんな中で助けられたのがオンライン就活というサービス。
息子同伴で参加することの許可を事前にもらって、ウェブ説明会やセミナーに参加した。育児就活の身にはとても恩恵を預かった。
しかし大変だったのが、Zoomを使った説明会のブレイクアウトルームで行われる座談会。
息子の「構って〜」が強くなったり、目が離せないので集中して話を聞いたり質問したりことができず、ライブで参加するのにとても苦戦した。(結局はYoutubeとかアーカイブ動画がやっぱり最高)
それとは別に、同じ大学の先輩で今はHR系の会社に勤めている、超信頼できる先輩に「自己分析シート」のファイルをもらった。
それを日々埋め続け、社会人との面談を終えたら記入し、また一人で考え・・・と、深夜に息子が寝付いた後でスプレッドシートと向き合いながら自己分析を深めるのが日課になっていた。(いま見返すとシート10枚分くらいゴリゴリ書いている)
👆自己分析シートの一部をちらり。企業説明会参加中にとっていたメモ
そして大きな転機になったのは、この先輩に紹介してもらったあるデザイナーさんとの出会いで、この方とのお話をきっかけに「デザイナー職で就活する!」と意思決定し、そこから加速した。
そのへんの詳しい話はこちらに👇
5月
選考を進めながら、ネットを駆使して情報サーフィン🏄♂️
👆の記事の中で書いたようにデザイナー選考は思っていたより順調に進み、本選考がいくつか始まった。
しかしそこでも壁に出くわす。
応募したのはいいものの、社員さんと会ったことない&企業のこと知らなさ過ぎる問題🤦♂️
前述のとおりOB訪問のハードル高々&一般的な就活生のメジャーな動き「夏のインターン」「冬のインターン」の時期は育児真っ盛りで一社も参加していない。圧倒的ハンデ。
しかし、せっかく面接の機会をいただいたのにこのまま「オンシャのこと、知りません」なんて言いたくない…ということで、OB訪問の代わりにSNSをとにかく読み漁った。(SNSストーカーもともと得意🔥)
デザイナーチームの社員さんを中心にTwitter、note、他ウェブメディアでの取材記事を探し、何度も目を通した。応募していない企業の記事もたくさん読んだ。
インターン体験記を読めばインターンに参加した"つもり"になれるし、デザイナーさん達が業務で経験した壁やそれをどう乗り越えたかの話を読めば、ストーリーを追体験することができて私も経験した"つもり"になれる。いいなと思った記事はNotionにストックした。
👆Notionのなぐり書きメモちらり。
そして就活のために始めたものの義務でやっている感じはまったくなく、普通に面白いしためになりすぎるので今でも続けている。
そしてたまたま私はすべてウェブ面接になったので、Zoom画面を開きながら横のブラウザでは社員さんのSNSウィンドウを開き、質問に備える、ということもやっていた。(実際にSNSについての質問結構されたので、まじ助かった)
それが功を奏したのか、デザイナー職に切り替えてからの選考では一社も落とされることなく、希望する全ての企業で最終面接&内々定までいただくことができた。
その中でも内定を受諾したのは、IT業界の中でも働きやすさ・子育てしやすさがかなり上位にある企業(だと思っている)。あと東京じゃなくて福岡で働けることが決め手になった。
無事、来年の春から、デザイナーとして働く予定である。
まとめ
育児しながらでも就活をして、複数企業(上場企業や人気企業)から、内定をいただくことは、できました!
もちろん、私一人では絶対にここまでたどり着けなかったわけで、面談に快く応じてくださった社会人の先輩たち、相談に乗ってくれた友人や後輩や家族、何よりずっと横で支え続けてくれたパートナーのおかげでしかない。
そして内定を出してくれた企業も、私のスキルや能力を評価した訳ではなくあくまでポテンシャルに期待してくれているに過ぎないので、
次は「育児しながら期待以上の働き方をする」フェーズになる。
育児しながら働くということは企業にとって、少なからずリスクを伴うものであると思う。たぶん。
そんなリスクを取って私を採るという意思決定をしてくれた企業に応えられるように・・・頑張っていきたい・・・!と思う。
就活やSNSを通じてつながった皆さん、私が育児を言い訳にしない働き方をしているか、どうかこれからも見届けてください。💁♂️
そして、周りに育児しながら就活をしようとしている人がいれば、この記事を紹介してくださるとうれしいです。
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追記(2021年5月9日):続編を書きました!
🕊 twitter:@rimmmonga
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note公式に取り上げていただきました!(1年後のタイミング!)